風来坊
友達にそそのかされて投稿してみました。至らぬ所多々あると思いますがどうぞよろしくお願いします。
「風来坊」 風に吹き寄せられたように、どこからともなく、さまよって来た者。また、気まぐれ者の意。
ここは村と村を繋ぐ林道、木の葉の隙間から漏れる日差しを心地よく、見渡せば色とりどりの花々や青々とした木々、そこにやって来る虫や動物達。
とてものどかなこの道をボサボサ頭に不精髭を生やした柔らかい表情の男がのんびりと歩いていた。
ふと、どこからともなく呼び止められる。
「おい!そこの小僧!」
粗暴な声に日光浴並びに森林浴を邪魔された彼はピタリと足を止め、声の方をチラリと見る。
木の陰から背中に斧を担いだ体格のいい男がニヤニヤしながら出てきた。
「なんか用かい?」と彼が不機嫌そうな顔で聞き返す。男が答えた。
「俺はここら一帯の主でな、この林道もちょっとばかし通行料を頂いてるもんでね。」
男はざっとこれくらいだと、ズラリと0の並んだべらぼうな額を提示してきた。
「わりぃ、そんな額の通貨は持ってないんだ、もし見逃してくれないなら引き返すぜ?」彼は答える。
「そうかぁ、それじゃあ仕方ねぇなぁ!」
「お、おじさん話わかるぅ!」
「持ち物から頂くしかねぇなぁ!」
「あらら、そうなっちゃう。」彼はため息をつく。
「痛い目にあいたくなかったら身ぐるみ全部置いていけ?そうすれば命だけは助けてやろう。」
男はそう言うと斧に手をかけ、左手でスッと合図を送る。すると道を挟んだ林から盗賊風の輩が次々と現れる。ざっと十人くらいが各々武器を携えて彼を囲んでいた。
「やめといたほうがいいぜおっさん、俺なんかたいした物持ってねぇから骨折り損だよ?」
「ぐだぐだ言ってねぇで早く荷物を置いていきやがれ!それとも痛い目にあいてぇか!!」
男が声をさらに荒らげ斧を抜く。
「やるってんなら、どうなっても知らないよ?」彼はそう言うと、腰に下げた刀に手をかけ男を睨む。すると先ほどまでほとんど無風だったにもかかわらず風が吹き始めた。
先ほどとは違う彼の鋭い目と声、謎の風に気押される男、恐れを振り払うように部下に攻撃の指示を送る。
盗賊達が一斉に襲いかかる、彼はそれをのらりくらりと避け、弾き、流しながら一歩、また一歩、と男に近づいてゆく。がおかしい、彼は刀に手をかけたままで一瞬たりとも抜いていない。まるで彼の周りを護衛の騎士が守っているかのように盗賊共の攻撃を防いでいる。
「な、なんなんだお前は!!」悲鳴にも似た男の叫びと共に振り下ろされる斧。
次の瞬間、彼は刀を抜き放ち、周囲を一閃する。
すると男の斧と囲んでいた盗賊たちの武器が突風と共に全て弾き飛ばされ、例外なく破損、使用不能になっていた。
何が起きたのか分からず、ある者は恐怖に逃げ出し、ある者は口を開けたままへたりこんでいた。
「ありゃ、これじゃあ骨折り損じゃなくて武器折り損だな」彼は元の柔らかな表情でつぶやいた。
彼は何事も無かったようにのんびりとした足取りで林道を進み始める。
いつの間にか風が止んでいた事に男が気がついたのは彼の背中が見えなくなった頃だった。




