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第二話 目撃

入学式があり、授業も始まった。

友だちもできた。同学年で、平民から9人通っているから、まず平民同士で仲良くなった。

一人は文字の美しさが評価されたアンヌちゃん。

もう一人は、声の美しさが評価されたというエネリくん。


貴族様の輪にはやはり入りづらいし、別に入らなくても良い。

それに、中には、オーギュット様みたいに、仲良くなれる人もいるだろう。期待したい。


貴族の学校は、色んなものが豪華で圧倒された。

机一つとってもそう。夢の世界に入り込んだようだ。


教室移動で、まるでお城の中のような廊下を歩いていると、皆がどこか憧れる眼差しを向けているところがあるのにイセリは気づいた。

視線を追って見やると、第二王子オーギュット様が、あのご令嬢と一緒に歩いているところだった。

イセリの傍のアンヌがホゥっと息を吐いた。

「ねぇ、まるで小説の挿絵のようね。素敵」

アンヌがうっとりするほどに、二人は様になっていた。

歩きながら、幸せそうに笑いお互いを見つめている。

イセリは少しつまらなく思った。

王子様は、すでに誰かのものだなんて。

イセリはアンヌに言った。

「私、入学式の前に、オーギュット様に声をかけてもらったの。とても優しい方だったわ」

「まぁ」

アンヌは驚いて顔を赤くした。

「どう声をかけてもらったのよ!?」

「何か困ったことがあったら、相談して良いって言って貰ったわ」

「わぁ、素敵! それって、私が相談に行っても良いって事かしら!? あぁダメ、でもそんな畏れ多い事できない!」

アンヌがはしゃぐので、イセリは「大丈夫よ」と笑って答えた。

相談に乗ってもらえる自信があったし、オーギュット様は、きちんと対応してくださる人だと思う。


***


「あれ。こんにちは。イセリ=オーディオ嬢。学校生活は楽しんでいる?」

通学路で、イセリはオーギュット様に声をかけてもらった。

実はまたお話しできればなんて夢みたいなことを思って、このあたりでオーギュット様が来ないか待ち伏せしていたのだ。

うまくいって良かった。声もかけてもらえたし、きちんとイセリの事を覚えてくれている。嬉しかった。


イセリは王子様に一番の笑顔で返事をした。

「はい。とても毎日が楽しいです。学校が夢みたいに素敵で」

「そう。それは良かった」

「はい」

王子様がイセリの様子に穏やかに笑う。


周囲がざわざわしているのをイセリは分かっていた。きっと、王子様と話せるのが羨ましいのだろう。


イセリは、次に会えたら尋ねたいと思っていた事を聞いた。

「あの、実は、少し困っていて。教えていただけたら嬉しいのですけど」

「・・・どういったことを?」

「食堂を使ってみたいのですけど、どう使えば良いのか本当に分からなくて・・・。友達とも困っていたのです」

王子様は瞬きをして尋ねてきた。

「食堂の使い方・・・。・・・教師はきみたちに指導をしていないのかな」

「はい」

「そうか。気づかなかったな。申し訳ない。きっと代々、困っていた人たちがいたんだろうね。ねぇ、ユフィー」

王子様は、傍のお姫様に声をかけた。

お姫様は王子様に頷いた。

「・・・そうですわね。暮らしが違うのですもの、私たち、気づいていなかったのですね。・・・オーディオさん、ご不便をおかけしたようで、申し訳なく思いますわ」

「えっ、なぜあなた・・・が謝るのでしょう?」

イセリは単純に驚いた。ちなみに、ご令嬢の名前は忘れてしまっていたので呼べない。

お姫様は、少し難しい顔をしてさらにイセリに詫びた。

「生活習慣が違う皆様にも快適に過ごしていただくよう計らうのが私たちの務めでもありますもの・・・。少し複雑かもしれませんから、先生方に皆さまに教えていただけるよう、私からも頼んでおきます」


えっ、とイセリは戸惑った。

使い方が分かるのは嬉しいけれど、先生からだなんて、なんだか大事になりそうな気がしてそれは嫌だと思う。

今、簡単に説明してもらえたら嬉しいけど、そんなに複雑なのだろうか。

「えっと・・・それでは、申し訳ないので」

「気にしなくて良い。食堂も楽しめた方が良いでしょう?」

王子様が優しく笑う。

はい、とイセリは頷いた。

やっぱり親切な人だと心が躍った。もっと、仲良くなりたいと思った。

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