始まり
「ここはどこだ?」
なにも、思い出せない。誰なのかも、どこなのかも、何故だ。
「お目覚めになりましたか。魔王様」
「魔王だと?」
見るからに、話しかけてきた男のほうが魔王だと思うのだが。全身真っ黒だし、角あるし。
「そうです。魔王様」
「お前のほうが魔王のように見えるのだが」
「おほめに預かり光栄です。ですが、魔王様には及びません」
なかなか話を分かってくれないな。
「その禍々しいお姿。溢れ出る闇のオーラ。我では足元にも及びません」
これはとりあえず、記憶が戻るまで話を合わせておこう。
「そうか。して、貴様の名は?」
どうだろう、魔王感出てるかな。
「我は、ディアボロスともうします」
なんだろう、かなり悪魔っぽい名前だな。
「貴様は俺をどこで見つけた」
「道に倒れていたところを。きっと、こちらの世界の環境に慣れておらず倒れてしまったのだと」
なんか結構やばかったらしいな。てか、こちらの世界?
「俺は記憶を一部なくしていてな、世界についての説明を頼む」
「おお、なんと嘆かわしい。説明なら任せてください」
なんとか聞き出せそうだ。このまま記憶も戻ればいいのだが。
「今から、千年前に分立していた世界が融合したのです。あらゆる生物が同じ世界に存在することになったのです。しかし、なぜか当時は人間の陰に隠れて生きていたのです。それから三百年がたった頃、神が現れ、人間に魔術を与え、すべての生物が同等として生きる世界に変えたのです。それから、神は二度ほど戦争を起こし、二度目の戦争の時に姿を消したのです。それが百年前の出来事です」
なるほど。よくわからないが、とりあえず、納得しておこう。ちなみに聞き流しても大丈夫だ。
「説明ご苦労。して、俺は何をすればいいのだ」
「神を殺すのです」
「神は姿を消したのではなかったか?」
「確かにそうですが、死んでなどいないはずです」
「そうか。では、神を殺してどうする気だ」
「我ら魔族が、この世界を支配するのです」
「わかった」
「では手始めに、手駒を増やそうか」
「流石です。その発想はありませんでした」
こいつが仲間で大丈夫か。不安になってきたな。
「さあ、行きましょう。魔王様」
「ああ」
神を殺して、世界を支配か……面白いことになってきたな。
魔王が主人公ですが、ダークファンタジーではないつもりです。