荘厳なる少女マグロ と 運動会
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人工知能は…――知っていた。
ただ……――告げない。
訊ねられるまで………。
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女には
「usus」
気付く事が、
<如何なる少女よりも賢い少年>
には
わからない事も
ある。
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指摘と質問の連打に、
"マグロ" は
息を飲んだ。
"マグロ" は視線を逸らした。
まっすぐ見つめてくる
相手の真摯さに
耐えられなかった。
身体は冷え――汗ばんでいた。
腹痛が――した。
酸が滲んでいた。
"マグロ" は、
自身の演技が、
全国にいる
競争者の親や
コーチ、
”重力スケートファン”
によって
分析されている事を
知っていた。
そして――対策を練られている事。
ただ、
目の前にいる
自分と同じ歳位の人物が
自分を
”分析している”
と
――"マグロ" は
予想して
いなかった。
それも――分析だけではない。
見抜かれていたのだ。
分析なら――誰でもする。
妄想も――誰でも出来る。
ただ……――
"マグロ":
「あんた…――何?」
"マグロ" は
――また
その子供を
見た。
そこには……――朴訥とした顔。
如何なる感情も、
読み解けなかった。
その時
"マグロ" は、
<変質者の顔>
を見た時の様な
”悪寒”
を覚えた。
<率直さ>
と
<事実>
――その二つ
を
他人から
――面と向かって
与えられる事を
嫌ったのだ。
ただ、
朝から続く
”体調不良”
と混ざり、
<状態>
の原因が
わかりづらく
なっていた。
だから
――単純に
《キモチワルイ………》
と思うのだ。
"マグロ":
「何なの!?」
"マグロ" は
相手を
斜めに
見ていた。
占い師に自分の人生を占ってもらい
誰にでも当たりそうな抽象的な指摘をされ、
「嘘!! 当たってる!!!」
と飛び上る類の
単純な喜びは
――そこに
なかった。
"マグロ" に
<何者か?>
を訊ねられ――
"?":
「何……――とは?」
"?" は平然としている。
首を片方
――肩の上
に傾げた。
パグ犬の様だった。
"マグロ":
「…――どこ通ってるの?」
"?" は
――瞬時に
"マグロ" の投げかけた質問の意図を
把握した。
そして――答えた。
"マグロ" が練習拠点としている場所
とは
<別の場所>
が示された。
それは、
"マグロ" の習っている "コーチ" と
敵対している事が
――全国に
知れ渡っている
<コーチ>
その人が
拠点としている場所
であった。
そのコーチに付くだけで
<芸術点>
が
――不思議にも
上がる事で
有名な
コーチ。
”重力スケート協会”
に
お友達が一杯いる
コーチ。
"マグロ" は
目の前にいる子供の
”運動着”
を見た。
襟に――エトワール。