荘厳なる少女マグロ と 運動会
"?":
「去年のデータを
――全国大会とか…
――他の大会とか……
――入れて………
――比較して……
見ると、
君の
<シュヴィメン>
のペースは
――最初から最後まで
”平均”
を
――急に
落とす事が
ない筈
なんです。
君は
大体
最初の頃のペースのまんま、
最後までやる。
急には落ちない。
ボクの計算では、
そうなんです!
こんなに最後の方のタイムが遅くなるなんて、
ヘン。
変だ!!
君は
”調子に波があるタイプ”
じゃないから。
あと…――
今日は、
腕を後ろに上げる時、
ココらへん [上腕三頭筋辺り] に
重さが掛かってるみたいに、
腕のハンノ― [反応] が遅くなっている……。
ちょうど25ラップ目辺りから――
急に。
外からじゃ、
キンソシキ [筋組織] の
ガイブシゲキ [外部刺激] への
ハンノー [反応]
スーチ [数値] を
――細かく
トラックする事は
出来ないけど――
ゼッタイに
そう。
足を掻いて
最初のポジションに戻るまでも
おんなじ。
オックー [億劫] そうだった。
ノー [脳] が
完全に
腕の動きに集中していない時に
腕を
コージューリョクアツクーカン [高重力圧空間] で
動かしてる――
そんな時みたい。
君は
特に
<アップ>
を終わろうとする時に
――<アップ>
――を〆ようと
――イシキ [意識] するせいか………
”腕のハンノー [反応] が速くなりがち”
だったんだ――
その筈なんだ!!!
ボクの計算ではそうなんだ!!
それなのに――それが起きていない。
エイホウ [泳法] を変えた訳じゃないでしょう?
――<シュヴィメン>
――の選手じゃないんだから
――泳ぎ方のコーチを付けるとは
――思えないし……。
君の
シンタイネツリョーハッサンチ [身体熱量発散値]
に
イジョー [異常]
がある訳じゃないけれど…――
でも……――
なんかヘン。
変なんだ!
他の子たちの泳ぎを見ても、
空間の
カンキョー [環境] が
特別
イジョー [異常]
って事もない。
ホーシャユーセー [放射優勢] 空間は
ちゃんと閉じられていて――
穴は………――
うん――安定してる。
ガンマチ [γ値] も――オーケー。
ペーハーチ [pH値] は
――別に
調べるまでも
ないから……。
ううん…――」
宙、
何もない場所で
指を鍵盤の様に動かしながら、
その子供は、
具体的な数字を
いくつか
口にした。
"マグロ" が
<アップ>
の為に用いた
タイムを示す
数字。
"?":
「――君はいつも予定を立てて
泳いでいるでしょう?
君はそのタイプ――……その筈。
で、
ナイヨー [内容] が
どうだろうと
ゼッタイに
決めた時間が経ったら
<アップ>
を止める。
今までに
レーガイ [例外] は
ない。
<キテイ>
とか
<[プログラム・] クール>
の時だって、
毎回
決まった動作をしてから
入ってるし。
君の性格だよ。
今日もそうだけど………
――そう”です”けど……
――最後の方は
ぐだぐだ
だった。
変です。
最初だけ速くて
――最後の方は
『グダグダ』。
なんか疲れ切ってるみたい…。
ボクのプログラムがたてた
予想チイキ [値域] では、
最低ラインですよ
――君の
――今の
――平均タイムは……。
お腹でも痛いんですか?
泳いでいる途中で、
何回か
お腹に手を当てていたでしょう?
薬、飲みました?
ううむ………――
君が大きな怪我をしたという話は
聞いていないし……
――ハツネツジョータイ [発熱状態] には
――ない様だから…
何か心配な事でもあるんでしょ?」
場に水はないが……――
立て板に水。
流れたそれの中、
難しい言葉を敢えて使おうとする
子供の
<虚勢>
が
垣間見えた。