荘厳なる少女マグロ と 運動会
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集団の会話は
――以後
長く続かなかった。
"マグロの姉" は
――時間を調べ
「公式練習に向かわなければならない」
旨を告げたのだ。
外国人達は
――事情を知ると
――口々に
引き止めた事を
謝罪した。
"マグロの姉" は
それが無用である事を
伝えた。
集団には
<満足>
が在った。
それが――総意。
一部はそうでなかろうとも、
そういうものであり、
そういうものとなるものだ。
自身の信じる――美しさとの繋がり。
願望――完遂。
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そして
<何かに好意を持つ人間>
は、勘違いをするのだ…――
自身が
「美の擁護者である」
と。
自身には
「審美眼がある」
と。
それは
――まるで……
たくさん勉強してきたつもりの外国人が
「金閣寺ではなく
銀閣寺が好きです!」
と主張する時に表わされる
<揺るぎない自信>
に似ている。
「金は成金趣味の下劣さだ!!」
という理由故に
――偏見故に
金メッキが為されていない
<銀閣寺>
を褒め称える
という
単純さ。
そして
――教科書から
――自分に都合の良い
――<それらしき単語>
――を引っ張り出し
言い出すのだ………――
「書院造ってイイよね?」
そして――二条城の二の丸を無視する。
それらにとって、
金の掛からぬものなら
すべてが……――
わび
と
さび
――なのだろう…。
場には
<声高な下劣>
満ちて……
閑寂
無し。
その内、
それらは――
「この
――色落ちして
――穴だらけで
――カレーを零して
――シミだらけの
”スカート”、
リサイクルショップで
百円で買ったんだ!!!
見えないでしょ!!?」
と自慢しだす
だろう。
その
――安さで有名なブランド製の
<お気に入りスカート>
が………
”幽玄”
とでも
言われる時代が
――未来には
来るのだろう……。
それらは…――
金が
どこで
どの様に配置され、
金という
世界に於いて
希少であった物
――異質な物
が、
どの様に
――普遍的に在りながら
――変わり続ける
周囲に
溶け込み、
どの様に
制作者が
その様な金を使って
類稀なるものを
示そうとしたか?
――を考える事はない……。
それらは………
<自身にとって脅威にならないもの>
だけを選ぶ。
後は……――後付け。
それらが…――
多くの
”チャチさ”
の中で
組み立てられ、
”チャチさ”
の中に
埋もれていき、
埋もれる中でも
輝きを放とうとする
<人間の技>
――を理解する事はない。
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確かに外国人は
"マグロの姉" が
自分のしなければならない事を犠牲にして
対話に時間を割り当てた事に
謝罪
と
感謝
の弁を述べた。
しかし、
誰も
"鼈" に対しては
引き止めた事を
謝罪しなかった。
実際、
"鼈" は
――対話が始まる頃には
公式練習を終えていた。
それでも――
誰もその事情を知らなかったにも関わらず、
外国人は
"鼈" に
試合前
会話し
時間をロスさせた事を
謝罪しなかった。
手足が短く
寸胴の少女に
気を
使わなかったのだ。