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荘厳なる少女マグロ と 運動会

 外国人に

 <好感>

 を

 ――それ程

 抱かれていない

 ――寸胴な

 "すっぽん" は

 ――敏感に

 それを

 察知した。




 認めざるを得なかった。




 そして

 ――少しだけ

 意気消沈を

 表した。




 ―――――――――――――――――――――――――




 同じ様な行動を取っている

 <外国人の集団>

 といっても

 ”すべてが画一的に

  同じ行動を取り続ける”

 とは言えない。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "すっぽん" の傍にいた外国人が

 ――敏感に

 "すっぽん" の表した変化に気付き、

 "すっぽん" に

 ――世界共通語で


 「あなたは大丈夫か?」


 を意味する言葉を

 投げかけた。




 拗ねた子供を宥めようとする

 親の様だった。




 "すっぽん" は

 ――言葉をかけてきた外国人に

 言葉を

 返した。




 その時に付された笑顔には、

 陰影が濃く

 過っていた。




 "すっぽん" は

 ――新シーズンを迎えるに当たって

 無理なダイエットして

 彫りが深くなっていたから、

 微笑みは

 無気味に

 ――そこに

 在った。




 "すっぽん" に親切を投げかけた

 <外国人>

 は、それに気づいたが、

 少女に

 ”世の中の残酷さ”

 を知らせなかった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 明らかに

 場の中心は、

 移行していた。




 誰も

 事実を

 口にしない

 ――だけ。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "すっぽん" の

 <意気消沈>

 を目で確認した

 "マグロの姉" は、

 優越を

 知った。




 "マグロの姉" の笑みが、

 わざとらしく

 為った。




 その時、或る外国人が、話し出した。




 "マグロの姉" は

 顔を

 そちらに

 向けた。




 <作為>

 は、見えなくなった。




 外国人にとって

 "マグロの姉" の姿は

 単純に


 <無垢>


 としか

 見えなかった。




 ”或る外国人”

 は話し続けた――




 「toux…」




 「……toux」




 明らかに――


 "マグロの姉" に向けて

 だけ

 話していた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 試合前の勝負は

 決まった


 ――その様に見える。




 ただ

 場の中心がずれても

 "すっぽん" は、

 戦う事を簡単に諦める少女では

 なかった。




 場から逃げ去る事なく、

 持ち前の

 <アグレッシブさ>

 に駆られて

 ――隙あらば………

 <"マグロの姉" よりも自分が優れている事>

 を、証明しようとしていた。




 ただ――


 "すっぽん" には

 問題があった。




 その時に話している外国人の

 話している内容が、

 わからなかったのだ。




 外国語なのだから。




 "すっぽん" の母国語ではなく、

 世界共通語でもない言葉。




 世界の中でも

 一部で用いられている

 特別な言葉。




 "すっぽん" には


 <それが何語なのか?>


 という見極めさえ

 難しい。




 "すっぽん" は、

 理解しているフリをしながら、

 外国人のお喋りを

 聞いていた。




 そして

 ――皆に好かれている

 "マグロの姉" も


 《[語学に於いては] どうせ自分と同じレベルだろう……》


 と考えていた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 世の中には

 <翻訳機>

 というものがある。




 ただ

 ――現代に於いて

 ――そして

 ――異文化コミュニケーションに於ける

 翻訳機の使用は


 <人間の実力の無さ>


 を意味する。




 努力すれば得られることを

 ――国際人なら

 ――出来て当たり前の事を…

 獲得していないのだ

 と見做されるのだ。




 機械によって便利になった世の中だからこそ、

 機械に依存するだけの人間が賞賛される事はない。




 ―――――――――――――――――――――――――




 ”或る外国人”は

 いつまでも

 "すっぽん" には

 わからない言葉で

 話し続けた。




 "マグロの姉" にとって、

 それは

 ”理解可能なもの”

 であった。




 "マグロの姉" は

 適切な箇所で

 相槌を打っていた。




 "すっぽん" は

 ――ただ……

 高を括っていた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "マグロの姉" は

 <母国語>

 と

 <世界で最も共有されている言語>

 を含め

 <三カ国語>

 が、出来たのだ。




 教育熱心な

 "マグロの母親" が

 ――世界で闘う為に

 最低限必要なものとして

 子供に強いた事。




 子供が


 「嫌だ!」


 「やりたくない!!」


 と泣きながら

 努力させられた

 習い事。




 ―――――――――――――――――――――――――




 話が途切れた時

 ――その”或る外国人”が話す言語を用いて

 "マグロの姉" は

 意見を挟んだ。




 謙虚に。




 ”或る外国人”は、驚いた様子をして見せた。




 意見を述べられたからと言って

 気分を害した様子は

 なかった。




 寧ろ――逆。




 そして

 その

 ”大勢が話す事の出来る訳ではない外国語”

 を話す事の出来る

 "マグロの姉" を

 ――皆の前で

 褒めた。




 世界共通語で。




 その時――恥じ入りを表現する "マグロの姉" は気付かない。




 外国人がした事――




 それは


 <エグザマン(テスト)である>


 という事を。




 "すっぽん" も

 気付きはしない。




 少女達は

 終わってから

 理解するだけ。




 その時に事情がわかっているのは、

 ”重力スケート協会”

 のメンバーだけ。



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