荘厳なる少女マグロ と 運動会
スペースリンク場
入口付近には
<外国人>
が
たくさん
いた。
一か所に集っていた。
入口を――遮る様に。
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"マグロ" のいる国は
――他国と比較しても
同じ色の
髪や目、
皮膚の色をした
人間が
多く住む場所であった。
それでも
――大昔よりは…
外見にて示される
<色>
に於ける
”多様性”
が国民の中で
珍しくなくなった――
そんな時代。
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一塊の
外国人達は、
会場で
”異質”
に見えた。
服装は、
大勢が着る服と
相違無い。
ただ、
"マグロの姉" が
一目で
《……外国人だ》
と思う程
――それらは
その場所に、
溶け込んでいなかった。
観光地であるなら目立たない
――そして………
世界大会の開催地であるなら
特別ではないだろう。
ただ――
国内の地方大会に於ける
<外国人>
の姿は
――世界で活躍しようとして
――外国生まれの人間と付き合いも多い
選手や観客たちにも
「珍しい」
と思わせる程、
見る機会が
少ないものだった。
"マグロの姉" と
隣りを歩くジュニア選手は
その
<外国人の集団>
の方へ
近づいて
行った。
より近づくと、
集団は
<外国人だけではない>
事が、
わかった。
”重力スケート協会”
に属する
"マグロの姉" と
同国人
もいた。
理事の姿もあった。
そして……――
"鼈" がいた。
"鼈" は
笑顔で
外国人達と
話していた。
競技用の衣装は――つけていなかった。
体形が露わにならない服でも、
その短い手足
――太った胴体
は
――選手でもないのに
――スタイルの良いメンバーが多い
集団の中で、
際立っていた。
"鼈" が、
"マグロの姉" を見た。
直ぐに視線を逸らした。
それは、
"マグロの姉" の隣を歩く少女が
"マグロの姉" と絡みそうな
視線を外す
という風ではなかった。
その様――快刀乱麻。
ただ、視線の切り口に――嫌悪が在った。
嫌悪は苦く――場を濁した。
"マグロの姉" は足を止めた。
”外国人の集団”
の中でも
"鼈" の傍にいる者が
"鼈" の視線の動き
――と
――その流れ
に気付き、
"マグロの姉" の方を見た。
ひとりが始めると――周りにも伝わる。
外国人の傍にいて
――グループを構成する円のうち
――最も中心から遠い場所にいた
”重力スケートの協会員”
も
"マグロの姉" の存在に
気が付いた。
その時になって
"マグロの姉" は、
集団に向かって
お辞儀を
した。
隣の少女も
隣りに
倣った。
”重力スケート協会”
の支部に勤める理事が
"マグロの姉" に
笑顔を向けた。
"マグロの姉" も
笑顔を浮かべた。
ラフレシアの様に。
本当のにおいは――届かない。
理事は
手招きをした。
"マグロの姉" は
――胸に抱いた
――二つの
――”重力ストーン”
――と共に
急ぎ足になった。
隣の少女は
後に続いた。
近づく毎に気付く…――
そこにいる外国人が
誰しも
<感じの良い笑み>
を
――"マグロの姉" に
投げかけている事。
そして
それまで
グループの注目を集めていた
"鼈" が
外国人と外国人の間
――隙間
から、
<嫌な目>
を
――"マグロの姉" に
向けている事。