荘厳なる少女マグロ と 運動会
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朝――居間に在った手紙。
誰も目覚めていない時間…
――"マグロ" は一度目覚めたが……
――二度目の眠りで
――”コシュマール”の中………
「朝食を作ろう」
と
――隣で眠る妻を起こさず
ひとり起きた "父親" は
「fut」
と
<それ>
を、見つけたのだった。
それは、
"マグロ" が
――暗いうち……
”ABEE”
によって運ばれてきたのに気付き、
居間まで運んだ、
宛先が書かれていない
<手紙>
であった。
手紙を見つけた時、
"父親" は
<それが何故、居間に在るのか?>
<どうやってそこに運ばれて来たのか?>
という事情を
知らなかった。
調べもしなかった。
開封し、
中身を見た "父親" は、
それが
”卑猥な手紙”
である事を
確認した。
ただ…――
以前から
――頻繁に
”変態”
の手によって
送られてくる手紙と
<それ>
は、違う事を
――瞬時に
理解していた。
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それまでの卑猥な手紙は、
<"マグロの姉" ではない成人>
<世間で生活する
大勢の
性的欲望の対象となる事を
仕事としている人間>
の卑猥な画像が
添付される事が
多かった。
それら画像の中でポーズを取る
被写体の成人たち
その皮膚の上、
服が身体を覆う面積は、
極めて少なかった。
布があるからといって
「服を着ている」
とは言い難い
――そんな状態。
朝に届いた写真には、
それらの姿は
なかった。
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勿論、
時には
"マグロの姉" をうつした写真
それが
――”変態”から
送られてきた事も
あった。
ただ
――その中で
"マグロの姉" は
――すべて
着衣姿だった。
<電車の中、立つ姿>
であったり、
<練習場に向かう様>
を盗撮した
写真。
送られてくるそれら写真の中で
"マグロの姉" の視線は
カメラ・アイの方を
向いていなかった。
盗撮に気付いている時だけは
カメラ・アイの方を向いていたが
――少なくとも
睨みつけていた。
”重力スケート”
の
<地方大会>
が開催される
その日の朝
送られてきた写真は、
それまで撮られたどんな写真とも
違っていた。
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胸筋が発達して
椀の様に盛り上がった
ポワトリン。
その上に茂る
カールして縺れた
胸毛。
男の――胸。
それに頬を寄せる――少女。
下着姿の――"マグロの姉"。
乱れた髪。
胸毛と髪が絡んで見えた。
上気して赤らんだ "マグロの姉" のチーク。
締まりのない微笑み。
「Trogne」
と熔けた――瞳孔。
恍惚――かく在りき。
指先――
「Peace!」
そして――
少女の肩に回されている
太い腕。
"マグロの姉" の首を包む――毛深い腕。
先に光る――薬指の指輪。