荘厳なる少女マグロ と 運動会
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若き日の
"マグロの母親" の
”ドラフト”
終了期日が
迫った。
国は
"マグロの母親" が
――それ以上
戦地にいる事を
望まなかった。
"マグロの母親" も
”ドラフト”
その期間延長を
申請しなかった。
組織も
個人も
早く戦場から
立ち去る事を
願っていた。
"マグロの母親" は
”戦争が嫌だった”訳では
なかった。
戦争は
"マグロの母親" にとって
単に
<仕事>
だった。
そう考える "マグロの母親" が
――別に
特異であった訳ではない。
”ドラフト”
がある時代、
それに選ばれる者は
――多かれ
――少なかれ
戦争というものを
毛嫌いする事はないし、
そうであったとしても、
そうでなくなるものだ。
"マグロの母親" にとって
「消えてほしい」
と
ずっと願っていた
<邪魔>
が消えた場所に
愛着など
なかった――
それだけだ。
そんな "マグロの母親" が
”ドラフト”
から解かれるまで、
戦地のヘッドクオーターに
――しばしば
響いていたメロディ。
その歌詞を
”重力スケート”
の
<地方大会>
会場ロビーにて
娘達と共にいる
"マグロの母親" は、
知っていた。
頭の中で流れる――口笛。
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"バレエ座の怪人":
「君が美しいのは、罪である。
”美しさ”とは、この世の罪!
サクラの季節は過ぎ…
あとは散るだけ……散るだけ………。
チューリング……チューリング…メイドノヒキャク……。
感謝と偵察はない………相変わらず……。
醜いのだ…わたしは……
屑なんだ………『わかっている』。
救いようがない……でも最期に望みがある…。
ただ……深夜にあるのは………わたしの欲望……。
この細道で…君を待つ……。
権威ある………<バレエ座>の前にて……。
わたしには権利がある…これこそ……わたしの正式なる権利………。
”崇高なるものを罰する”という……奪われる事なき権利…。
醜き怪人は君を罰する……可愛い小鳩………。
何故なら君は……この世で最も美しいから…。
君は……わたしが持っていないものを持っている………。
そしてそれは……”死刑台”を意味している…。
ひとつ……二つ………と数えよう……。
準備はもう…十分かい……?」
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