荘厳なる少女マグロ と 運動会
"マグロの母親" は、
後輩を苦しめ続けた。
後輩はただ耐えていた。
或る日の事だった。
上官は
――いつもの様に
後輩の
やる事
為す事
すべてに
コメントを付けていた。
そのアドバイスは
――明らかに
”仕事が遅くなる方法”
を薦めるものだった。
"マグロの母親" は、
迅速さより
同国人を苦しめる事を
選んだのだ。
確実さよりも
後輩が能力を発揮できない事を
求めていた。
"母親":
「ルールなの!」
"母親":
「ルールが絶対なの!!」
<感情>
を優先させたのだ。
同じ場で仕事をする者は
誰も
異議を唱えなかった。
仕事は
遅れようとも、
終わるのだから。
後輩は
先輩の揚げ足取りを
黙って聞いていた。
それまでは黙ったまま、従っていた。
ただ
その時
後輩は
――最後に
ひとつ
溜息をついた。
わざとらしく。
"マグロの母親" は怒り狂った。
"マグロの母親":
「何?
――わざとらしく溜息なんかついて!!!
なんか文句でもあるの!!?」
後輩:
「あなたとは
話しても
無駄です」
それで終わりだった。
後輩は、
相手を
見なかった。
そして――持ち場を離れた。
"マグロの母親":
「どこ行くの!?」
声を無視して、
後輩は
部屋を出た。
"マグロの母親":
「待ちなさい!!」
廊下の壁が、
歩く後輩を
見ていた。
"マグロの母親":
「持ち場に戻りなさい!!!」
皆が
同じ場にいる
"マグロの母親" を
見ていた。
"マグロの母親":
「これは命令です!!」
後輩が
ヘッドクォーターから
出ようとしている
のが見えた。
"マグロの母親" は、
建物を
ロックした。
後輩は
ロックを
――勝手に
解除した。
外は――戦火の下にある。
"マグロの母親" は、
隣りにいる上司を見た。
"怪人" は
後輩の行動を
<命令違反>
と見做した。
上官に対する――反逆。
「コード18…――コード18」
すぐに "マグロの母親" は、
待機状態にある
”ABEE”
を起動した。
戦闘型の
――敵を鎮圧する事を
――目的とした
<蜂>。
それが飛ぶ。
それが――飛ぶ。
"マグロの母親":
「警告です!――警告です!!」
後輩は既に、
荒地を
歩いていた。
遠ざかろうとするボロンテを
止める事は
なかった。
旧式のブレット銃の弾が、
遠くで
雨の様に
地面に
――斜めに
突き刺さっているを
皆が
見ていた。
埃が立っていた。
石が撥ねた。
そして
弾が降り注ぐ領域と
後輩の位置
の間の距離が
狭まりつつあった。
”ABEE”
が
――遂に
後輩に
追いついた。
首筋に停まり――
「プスリ…」
後輩は、地に倒れた。
仰向けだった。
泡を吹き――手首を揺らす。
その手は、
風に揺られる
<百合の花>
の様に見えた。
白き花を包む
渦の様な
砂埃。
後輩の目線は定まっていない。
焦点は、
澄んだ青空の中
<どこか>
に、在った。
そして……――
目が見開かれた。
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