荘厳なる少女マグロ と 運動会
その時だった。
観葉植物の周囲に集っていた
――”重力スケート”
――の選手で
――主に
――構成された
一塊の人間
――グループ
が、
散開
し始めた。
モメンタム――パスィーバブル。
ミーティングが
終わったのだ。
それを見て――
"怪人":
「じゃあ――もぅ…行くよぉ……」
"母親":
「ええ」
緊張が解けた。
それまで長く続いていたものが終わるのは
一瞬だった。
"怪人" は、
"青年の友達" を
見た。
一人、"怪人" の方を見ていた。
表情は
――誰も
読み取れない。
"怪人" が片手を挙げた。
"青年の友達" も
そうした。
"怪人":
「会えて良かったなぁ………」
視線は
"青年の友達" に落としたまま、
"マグロ" の家族に向かって
言った。
"母親":
「わたしも……」
"怪人" は、片手を下ろした。
そして――"母親" を見た。
二人は見つめ合った。
マイルドだった。
それを
"父親" と "マグロの妹" が
見ていた。
それに気づき、
"怪人" は
"父親" の方を向き――
"怪人":
「あなたにもぉ…
お会いできてぇ……
良かったぁ………」
目尻を下げた。
"父親":
「こちらこそ」
"父親" は嘘をついた。
お辞儀はしなかった。
"怪人":
「ではぁ……――また後でぇ…」
"怪人" は背を向けた。
その場に立つ者は
誰も
「さようなら」
とは言わなかった。
―――――――――――――――――――――――――
"怪人" 達の会話は
"マグロ" と "姉" には
届かなかった。
「ミーティングが終わった」
と判断し、
"マグロ" と "姉" は
公式練習に
向かおうと
する。
"コーチ":
「みんな――ちょっと待って!」
足止めを喰らった。
テンポラリーな離別が
場に示されている間に、
"マグロ" 達は
"コーチ" から
最後の注意が
与えられる。
即ち――
"コーチ":
「それと――
今日は
外国の
”重力スケート”
協会の方々が
この国のスケート事情を
視察にいらっしゃる予定だから、
みんな
気をつけてね。
将来
ジャッジになる方も
いらっしゃるんだから――
失礼のない様に。
誰かと擦れ違ったら、
知らない人でも、
ちゃんと挨拶を忘れない事!!
謙虚でいる事!!!
いいね!!?」
―――――――――――――――――――――――――
解放された。
"怪人" が "母親" 達から離れる姿が、
"マグロ" の目に
映った。
そして――
"母親" と "父親" が、
"怪人" の後ろ姿を
目で追っている姿。
"母親" と "父親" の二人が
一緒に
ロビーに設置された
安楽椅子に
腰掛けたのが
――"マグロ" には
見えた。
"怪人" は
――歩きながら
”にやけて”
いた。
"マグロ" と目が会った。
「tun」
と逸らした。
"マグロ" は
――笑みを浮かべる "怪人" を
「マジマジ」
と見た。
その視線は
――いつの間にか
"青年" の上に
落ちていた。
―――――――――――――――――――――――――
娘達が戻るのを待つ
"母親" は、
試合に向かおうとしている娘達より
落ち着いて
いなかった。
"母親" は
――隣りに座る
――夫に
――そして
――家族に
告げるつもりはない――
久しぶりに再会した
"怪人" が
自身の
<昔の恋人>
である事を。




