表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/1061

荘厳なる少女マグロ と 運動会

 その時だった。




 観葉植物の周囲に集っていた

 ――”重力スケート”

 ――の選手で

 ――主に

 ――構成された

 一塊の人間

 ――グループ

 が、

 散開

 し始めた。




 モメンタム――パスィーバブル。




 ミーティングが

 終わったのだ。




 それを見て――




 "怪人":

 「じゃあ――もぅ…行くよぉ……」




 "母親":

 「ええ」




 緊張が解けた。




 それまで長く続いていたものが終わるのは

 一瞬だった。




 "怪人" は、

 "青年の友達" を

 見た。




 一人、"怪人" の方を見ていた。




 表情は

 ――誰も

 読み取れない。




 "怪人" が片手を挙げた。




 "青年の友達" も

 そうした。




 "怪人":

 「会えて良かったなぁ………」




 視線は

 "青年の友達" に落としたまま、

 "マグロ" の家族に向かって

 言った。




 "母親":

 「わたしも……」




 "怪人" は、片手を下ろした。




 そして――"母親" を見た。




 二人は見つめ合った。




 マイルドだった。




 それを

 "父親" と "マグロの妹" が

 見ていた。




 それに気づき、

 "怪人" は

 "父親" の方を向き――




 "怪人":

 「あなたにもぉ…

  お会いできてぇ……

  良かったぁ………」




 目尻を下げた。




 "父親":

 「こちらこそ」




 "父親" は嘘をついた。




 お辞儀はしなかった。




 "怪人":

 「ではぁ……――また後でぇ…」




 "怪人" は背を向けた。




 その場に立つ者は

 誰も


 「さようなら」


 とは言わなかった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "怪人" 達の会話は

 "マグロ" と "姉" には

 届かなかった。




 「ミーティングが終わった」


 と判断し、

 "マグロ" と "姉" は

 公式練習に

 向かおうと

 する。




 "コーチ":

 「みんな――ちょっと待って!」




 足止めを喰らった。




 テンポラリーな離別が

 場に示されている間に、

 "マグロ" 達は

 "コーチ" から

 最後の注意が

 与えられる。




 即ち――




 "コーチ":

 「それと――

  今日は

  外国の

  ”重力スケート”

  協会の方々が

  この国のスケート事情を

  視察にいらっしゃる予定だから、

  みんな

  気をつけてね。


  将来

  ジャッジになる方も

  いらっしゃるんだから――


  失礼のない様に。


  誰かと擦れ違ったら、

  知らない人でも、

  ちゃんと挨拶を忘れない事!!


  謙虚でいる事!!!


  いいね!!?」




 ―――――――――――――――――――――――――




 解放された。




 "怪人" が "母親" 達から離れる姿が、

 "マグロ" の目に

 映った。




 そして――




 "母親" と "父親" が、

 "怪人" の後ろ姿を

 目で追っている姿。




 "母親" と "父親" の二人が

 一緒に

 ロビーに設置された

 安楽椅子に

 腰掛けたのが

 ――"マグロ" には

 見えた。




 "怪人" は

 ――歩きながら

 ”にやけて”

 いた。




 "マグロ" と目が会った。




 「tun」


 と逸らした。




 "マグロ" は

 ――笑みを浮かべる "怪人" を


 「マジマジ」


 と見た。




 その視線は

 ――いつの間にか

 "青年" の上に

 落ちていた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 娘達が戻るのを待つ

 "母親" は、

 試合に向かおうとしている娘達より

 落ち着いて

 いなかった。




 "母親" は

 ――隣りに座る

 ――夫に

 ――そして

 ――家族に

 告げるつもりはない――




 久しぶりに再会した

 "怪人" が

 自身の


 <昔の恋人>


 である事を。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ