荘厳なる少女マグロ と 運動会
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"バレエ座の怪人":
「…ダン・ラタント・ドュトワ――ダン・セット・リュェル……
………ダン・ラバレ……――オートリテール…」
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"姉" が
"鼈" と
視線でバトルをした後
――ヒステリーを起こしている間……
"マグロ" は
<自分の身体の調子>
を確かめていた。
駐車場で、身体を動かし続ける。
体調は最高ではないが、最低でもない。
目覚めの時程、悪くはない。
が………
――依然として
《……怠い》
し、
《…身体が重ぉい》
事は否めない。
それでも――
"マグロ":
《やらなきゃ》
"マグロ" は
――"母親" が
――必死に
――"姉" に自信を取り戻させようと
――骨を折っている間……
頭の中で、
その日の演技を
浚っていた。
会話は長く続いていた。
"マグロ":
「ちょっと
持ってて………」
"マグロ" は
父親" に
荷物を持たせた。
そして
――"母親" が
――"鼈" の悪口を言っている間に
駐車場の
固い地面の上
スピンジャンプした。
軽く――二回転。
着地した。
身体が回りきった――
その時だった。
"マグロの母親":
「ちょっと!
何回言ったら分かるの!!?」
"母親" が
イラつきの混ざった声で
そう言った。
片足で回り続け、
勢いを殺してから
"マグロ" は
――両足で
地面を踏んだ。
それから――
「süß」
と
立った。
"母親" と目が会った。
他の家族も
自分を見つめている様に
思った。
"マグロの母親":
「地面でジャンプのシュミレーションしたら、
踝、痛めるでしょ!!!?
やめなさい!!」
"マグロ" は、
自分より背の高い "母親" を
見上げた。
不貞腐れた顔だった。
"母親" も見返していた。
攻撃的だった。
ただ
――すぐに……
"母親" は、
イラつき
を和らげた。
少なくとも
敵意は
なかった。
"母親":
「とにかく、
もう手続きすればすぐに
公式練習に入れるんだから、
少し位
待ちなさい。
それと
――前も言ったけど…
地面でスピンジャンプの練習すると
踝や脹脛を痛めるから、
止めなさい
――長く競技を続けるつもりなら
――止めなさい」
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確かに――現代の
”重力スケート”
の教育理論では、
地面に足を付けた方法の
<ジャンプ・シュミレーション>
は、推奨されていない。
"マグロの母親" が主張した様に、
上記方法は、
<選手の足元を痛める危険性が多い>
と見做されている。
固い地面からジャンプして
固い地面に着地した時
足元にかかる負荷と衝撃は大きいのだから、
当たり前だ。
同じ理由で、
<ランニング>
や
<マラソン>
そして
<縄跳び>
も
”アップ”
の方法としては
推奨されていない。
”重力スケート”
の選手は
――ほとんどが
<シュヴィメン>
をする。




