荘厳なる少女マグロ と 運動会
―――――――――――――――――――――――――
"バレエ座の怪人":
「…ラセゾン・ドゥ・スリジィェール・アフィニ……
………アンスロンレスト・イシ――セ・アデフルゥィール……
デフルゥィール…」
―――――――――――――――――――――――――
これから
"マグロ" や "マグロの姉" が戦う事となる
国内の
<地方大会>
でも
――"姉" と "鼈" の
二人は
――前年……
顔を合わせていた。
前年度の
――ジュニア部門女子の
成績は、
"マグロの姉" が――2位、
"鼈" が――1位
であった。
[※因みに
"マグロ" も
――ノービスクラスに
出場し、
表彰台に乗った]
―――――――――――――――――――――――――
という訳で、
駐車場に立つ――競争者達。
"鼈" は、
身体の線こそ細いが、
頬が
木の実を貯えた
リスの様に
膨らんで見えた。
明らかに――無理なダイエット。
筋肉を残したまま
過激に痩せたせいで、
”牛蒡”
の様な印象を、
他人に与える。
否――
その立ち姿は
――煮ると出汁が染み込む繊維質の芯に
――太い針金が通っている様な………
――そう……
<泥を被ったサイボーグ>
の様でもあった。
細いけれど
――か弱くはない
ロボットの様な
肉体。
その上に乗った
――大豆の様に
丸く
固い
顔。
間違いなく
――筋肉があるせいで…
全体的に
彫りが深く
重力スケートで求められる
<女性らしさ>
がなくなっていた。
ただ
――少なくとも……
――"鼈" は
<男>
の様では
なかった。
"マグロの姉" は、
そんな "鼈" を
見つめていた。
"鼈" は
伸びをしてから
――爪先立ちで
地面を
「tot」
「tot」
と
――トーデシュラーフな
ステップを踏んだ。
屈伸をした。
そこで
"鼈" は
――すぐに
――遠くで自分を見つめている
"マグロの姉" の姿を
認めた。
睨みつけた。
前年よりもキツクなった顔付は、
髪をアップで縛っている為、
より”タイト”になっていた。
"マグロの姉" は
――距離がありながら
<威圧>
が、やってきて
《ビンタされた》
様に思った。
視線を逸らし――また焦点を戻した。
会うと
"鼈" は
すぐに
視線を
「tun」
と逸らした。
"マグロの姉" は、萎縮した。
そこで………――
"マグロの姉":
「ママン!」
"姉" は
"鼈" から目を
離さなかった。
"マグロの姉":
「ママ!!」
――と
ヒステリックな叫び。
"マグロの姉":
「あたしの衣装は!!!?
――あたしの衣装はどこ!!?」
"母親" が持っていた。
"姉" は
ひったくる様に、
目的の物を
掴んだ。
"母親" が、遠くを見た。
すぐに
<娘が激昂した理由>
を理解した。
まっすぐ娘を見た。
"マグロの母親":
「気にしない」
"マグロの姉":
「――でも
去年は……――」
「kind!」
「kind!!」
と金切声で遮られると
"母親" は――
"母親":
「――今年は最初から
飲んでやればいいの」
"母親" は、
口を再び開きかけた
――焦りを見せる
娘に
二度目の遮りを
許さなかった。
"マグロの母親":
「――落ち着けば勝てるんだから」
"鼈" を見た。
"鼈" は
家族に
<笑顔>
で話しかけている。
ただ――柔らかさはなかった。
実際、
笑顔を向けられた家族が、
張り詰めた顔をしている。
"鼈" が
――"マグロの姉" に
――背を向けて
歩き出した。
高笑いが聞こえた――気がした。
"マグロの姉" は
――地面を見ながら
爪を噛んでいた。
"マグロの母親" は
――畳みかける様に
言った。
"マグロの母親":
「["鼈" は] 去年より痩せたみたいね…
――でも、気にする事なんかない。
一年やそこらで身体が
――いきなり
柔らかくなる訳ないじゃない……
――もっと自分に自信を持って」
大声ではなかった。
言葉は
少女の不安を
取り除かない――
まだ。




