荘厳なる少女マグロ と 運動会
昔、
アニメに於いて、
少女は守られていた。
古典の騎士道文学の様に――
少女はただ守られ、
救われていた。
アニメに於いて少女である主人公が自ら何かをする時は、
闘いという手段が極力避けられていた。
そのうち、少女は闘う様になった
――男がバトルするのと同じ様に。
そんな闘う少女は
――いつも
カワイらしかった。
そんな闘う少女は
――いつも
スタイルが良かった。
そんな闘う少女は
――いつも
スカートを翻していた。
そして
見目麗しき少女に、
誰もが
共感していた。
醜い女は、ジョークの種でしかなかった。
―――――――――――――――――――――――――
"少年" は "マグロ" に残酷を示した。
"少年" は残酷さを謝罪した。
周囲に同級生がいない時だけ。
心からの謝罪――
"少年":
「ごめん…」
対し、"マグロ" は、許しの言葉を与えた。
"マグロ":
「別にいいし……」
ただ
――そのうち
"少年" は、謝罪を告白しなくなった。
"マグロ" の家にも行かなくなった。
内でも外でも
――どの様な状況でも………
一緒に遊ばなくなった。
話さなければならない機会が訪れても――
"少年" は、した事に触れなかった。
"マグロ" は悲しんでいた。
そして――"少年" も、苦しんでいた。
同級生の玩具としての標的が
――"マグロ" と "少年" から
別に移る前の事。
その日、
"少年" は、
――"マグロ" が可愛がっていた
<石亀>
に餌をやろうとした。
許可を求めた。
相手の要望を受け、"マグロ" は許可を与えた。
そして "マグロ" は、
からかいが始まる前に、
女友達とのお喋りに加わった。
女友達は、横目で動向を探っていた。
望みどおりの展開がないと、
どこかの誰かの恋愛状況について話し出した。
"少年" は
――男友達に囲まれ
水槽の縁に手を掛ける。
餌を手にし、それを下ろしていく。
<石亀>が察知する。
首を伸ばす。
そして――
頭上にぶら下がった餌を
<石亀>が
食べようとした……――
その時だった。
下降を続けていた餌が
――宙で
静止した。
<石亀>が首をさらに伸ばす。
届かない。
<石亀>が首を縮めた。
それを見て
――"少年" は
餌の在る位置を低下させた。
<石亀>が様子を伺っている。
そして――再び首を伸ばした。
口を開いた。
"少年" は餌を与えなかった。
何度も繰り返した。
"少年" は、友達と、笑っていた。
まるで、
昔の人間が
”ヨーヨー”という遊具
で遊んでいる様だった。
―――――――――――――――――――――――――
そう、
多くにとって、
楽しければ何でも良いのだし、
無能の楽しさという物は、
常に低俗だ。
―――――――――――――――――――――――――
普段、滅多に本を読まない人間が読める”本”
――そんな物…
――手術した後に出される病院食や
――離乳食の様な物。
噛む必要がない。
噛む歯すらないだろう……
――楽な物だけ読んでいるなら。
―――――――――――――――――――――――――
亀には、いつまでも、餌が与えられなかった。
亀は
――ふてくされたのか
もう首を出さなくなった。
すると "少年" は、指で甲羅を突いた。
笑っていた。
"マグロ" が気づき、諌めた。
"少年" は止めた………
――ただ、終わりではなかった。