荘厳なる少女マグロ と 運動会
"父親" は
――間を空けてから
毅然と返した。
"父親":
「前から思っていたんだけど…――
"君たち" が言う
<女らしさ>
って何なんだ?
ケツ突き出して、
スカートひらひらさせて、
流し目送って、
そんで男を誘惑する――
それが
<女性らしさ>?
いつの時代だよ……
――原始人じゃあるまいし………。
男を誑かす女が
<女性らしい>
なんて、
”中世の女性観”
だぞ。
<ファムファタール>
や
<コケトリー>……」
"母親":
「御託は止めて。
歴史の授業を
――今
受けるつもりは
ないから」
"父親":
「化粧して、
ジャッジに媚びるのが
<女性らしさ>
なのか?
<『獲得された時間を求めて』が何の話か?>
を知りもしない様な奴が、
”物語の世界観”
をジャッジしてるんだぞ?
<ハ長とイ短の違いは何か?>
さえ知らない様な奴が
”音楽の解釈”
をジャッジしてるんだ。
奴等は、曲のスコアさえ読んでない
――読めないんだから。
で、
そんな奴等の前で
子供に
<ショーフ>
みたいなマネさせて
高得点…。
<女性らしさ>……
――表現力?
子供にエロい顔をさせて、
それで
”フェイシャル・インプレッション”?
jaja。
『くねくね』
股広げて………」
"父親" の顔が捻れた。
"父親":
「性。
性。
性。
性。
性!
いつの時代だよ……
――今は…」
"母親":
「アナタだって男でしょう?
それが好き――」
"父親":
「そうだ…――その通りだ。
でも、娘に
<ショーフの真似事>
をしてもらいたいとは
思わない」
響きに冷淡があった
――車内はそうではなかった。
そして……――
"父親":
「もう――思わない」
"父親" は言い切った。
"母親":
「今すべき話なの?
――これ」
"母親" は、"マグロの妹" に目をやった。
"妹" は本を読んでいた。
"父親":
「君にだって
<ショーフの真似事>
なんてしてもらいたくない。
まして――娘には………」
語尾が濁された。
"母親" は、クリアにしなかった。
"父親":
「ま、君がしたいのなら別にいいんだけどね……
――jajaja。
”個人の自由”
なんだから。
尊重しなきゃ」
"父親" は鼻で
――駄目押しの様に
笑った。
"母親":
《本音は良くないと思っている癖に》
口にせず、
"母親" は、
<訝しげ>
を向けた。
"母親":
「一体どうしたの?
――あのヘンタイから来てる手紙に
――感化でも
――されたの?」
明らかに
昨晩までの "夫" とは
違っていた。
"父親":
「違う!!」
突然――叫んだ。
"母親":
「怒鳴らないでくれる?」
"母親" の態度が、硬化した。
"母親" が "マグロの妹" を見た。
"妹" は、本に目を落としたままだった。
相手の視線に誘われて、
"父親" も "マグロの妹" を見た。
"父親":
「ごめん。
でも――」
すぐに続ける。
"父親":
「スポーツだと思うから、我慢してきた。
スポーツだと、思うから。
誰も跳べない様なジャンプをして、
以前の人間が出来なかった事をする。
そう思うからこそ――我慢してきた。
でもさ…――
”重力スケート”は
<スポーツ>
じゃないのか?
最近の君は、変だぞ。
<芸術点>の計算ばかり――」
"母親":
「だって "センセイ" ["コーチ"] が……」
"父親":
「<女らしさ>
<女らしさ>
って!!!
難しいジャンプは、
挑戦さえ
させないだろう?」
"母親":
「そんな事ないでしょ?」
"父親":
「いいや――
あの子 ["マグロの姉"] が
五回転SJ [スピンジャンプ] を
――本格的に
プログラムに入れようとしたら、
やめさせただろう?」
"母親":
「だって怪我のリスクがあるんだから………」
"父親":
「君は、一体何考えてるんだ?
勝つ為なら――子供を売るのか?
売るつもりなのか!!?」
語気が荒くなっていた。
その時だった。
二人の娘が
”重力ストーン”
を入れたケース
を手にして
練習場から
出てきた。
目敏く見つけ――
"母親":
「とにかく……――後で話しましょう」
同じ様に見た "父親" は頷いた――
後で話し合えるとは
――微塵も
思っていなかったが。
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