荘厳なる少女マグロ と 運動会
多くは
単に
跳んでいた。
そして…――
多くは
<交錯足>
で跳んでいた。
膝を
折り曲げ……――
足を
<菱形>、
又は
「4」
の形に
作る。
滞空時間内で
スピンする上で、
バランスが
取りやすいから。
ただ………――
完璧主義者が
いた。
誰も
為さない事を
為そうとした。
そして……――
足を
曲げずに
跳び始めた。
スピンの間、
踵と踵を
合わせ、
膝と膝を
合わせて…――
両足の形が
<直線>
となる様に。
容易い事に……――
安い事に………――
満足しなかったから。
―――――――――――――――――――――――――
ひとりが
<完璧>
を為した時……――
誰も
それを
称賛しなかった。
為した事の
”意味”
を理解しなかった。
”意味”
がわからないから…――
「直線足」
――が行われた時
技は……
――現代の
――”重力スケート”
――の様に………
加点対象には
ならなかった。
「美しい」
――事が
美しく
見えなかった
のだ。
劣った者には……――
「難しい」
――という事が
理解出来なかった
のだ。
交錯足も
直線足も、
すべてが
同じ
”SJ”
に過ぎなかったのだ。
―――――――――――――――――――――――――
ただ…――
優れた知性の
持ち主だけが、
#偉業#
を理解していた。
そして……――
優れた者は、
劣った者が
劣っている事を
指摘する。
多くに
聞かれぬ中。
或る時………――
選手の中に、
<負けず
”嫌い”>
がいた。
劣っていた。
優れた者に
事実を
指摘され……――
やってみた。
完璧主義者の
真似をしたが…――
出来なかった。
直線足を
為そうと
し続けた。
そして……――
そのうち、
その他が
追随する様に
なる。
場の
平均が
上がり………――
SJを
行う際、
誰もが
足を
”直線”
とする様に
成る。
加点対象となる。
ただ……――
それで
「めでたしめでたし」
とは
ならない。
まだ
大勢は、
<交錯腕>
であったから。
―――――――――――――――――――――――――
誰もが
足で
”直線”
を形作る。
ただ…――
腕を……
――自身を
――抱く様に………
曲げていた。
そして
それは……――
誰もが
出来る事。
誰もが
している…――
簡単な事。
そんな中……――
<優れた者>
――が
現れる。
その者は、
自身の体を
”直線”
に近づけようと
した。
”究極の直線”。
SJの際に、
<交錯腕>
ではなく、
腕を
頭上に
揚げる事で、
”直線”
を完璧に
させようとした。
誰も出来ない事を
為す為に。
#偉業#
を示す為に。
「タノ」
――と呼ばれる
技である。




