荘厳なる少女マグロ と 運動会
少年は
――誰しも
皆の前で
<勇気を示す>
事を
求められる時が在る。
そしそれは
――屡…
残酷な形を取り
――時折……
最悪の結果に成る。
少女の場合
――必ずしも
状況が同じである
とは限らない。
時代は変化していた。
それでも………――
まだ少女には、
少年に求められる事が求められない――
そんな時代であった。
―――――――――――――――――――――――――
"マグロ" がスケートの帰り道、女友達にからかわれた後、
"少年" も、男友達にからかわれた。
少女達の会話を
――隣りで
盗み聞きをした男友達が、
尽きかけた話題を接ぐ為に、
少女達が遊んでいた玩具を
――男の輪の中に
投げたのだ。
"少年" は勿論、
友人から邪推に対し、
否定を返した。
そして "少年" も……
――邪推という周囲からの刺激によって
恋を始めた。
"マグロ" と "少年"。
二人は<思い>を、
”見ないフリ”
した。
まるで、
「1」として在る物が「1」として在るが故に
――妄想が鏡を作り出して…
「-1」という
――存在しない
反対の対象を想定し、
シンメトリーを作る事で
――算出される結果「0」を以って
場を安定させようとする――
そんな数学者の手順の様だった。
それは、
<優れた物>を目撃した実力のない”負けず嫌い”が
見た物を見なかったフリをする――
それとは違った。
"マグロ" と "少年"
それぞれは、
<思い>を見ずとも、
抱き続けていた。
スケートに行った集団が解散して
――夜が明けても……
クラスメイトに依る悪意のない<からかい>は
――学校で
尾を引いた。
冗談の満ちる陸の上で、
"マグロ" と "少年" の間柄は
――皆の前で
――明らかに
ぎこちなくなっていた。
目を会わせない<わざとらしさ>に皆、気が付いた。
下劣な同級生達は
――距離を保ちながら
――余所余所しく在る
そんな二人を囲み、
目配せをした。
ほくそ笑んでいた。
そして――
自分達の下品さが、
<二人の恋が
愛に転じる瞬間
を壊す>
という事を知らなかった。
クラスでは、何度も話題が蒸し返された。
証拠などなかった。
目撃されたシーンが在っただけであった。
それは、証拠ではなかった。
単なる練習風景であった。
しかし、妄想する者には、関係がなかった。
映像も残っていた。
そして、
映像が恋を証明しない事を、
誰も知らなかった。
"マグロ" も "少年" も、否定を続けた。
同級生は誰も信じなかった。
ただ――
二人が口でいくら否定をしても――
恋は消えなかった。
二人は、”頑な”に、なっていた。
段々
――クラスメイトに依る
当てこすりが
エスカレートしていった。
ただ、女友達は
"マグロ" が本当に嫌そうな顔をした時、
"マグロ" に直接 "少年" の話をするのを止めた。
"女友達":
「ちょっとー! やめなよー!!」
"女友達":
「○○ちゃん ["マグロ"]、かわいそーでしょー!!!」
勿論
そう言いながら
――陰では
以前の倍、
噂話をした。
それでも表面上は、止めたフリをしていた。
ただ、"少年" の友達は違った。
止める”フリ”さえしなかった。
"マグロ" には、否定を証明する事が求められなかった
――"少年" の場合は違った。
"男友達":
「お前、"マグロ" が本当に好きじゃないんなら、これが出来るよな?」
"少年" は、
<"マグロ" が不快に思う様な行為が出来るか?>
友人達に挑発された。
"少年" は、挑戦に乗った。
"少年" は残酷さを示した。
"マグロ" は悲しんだ。
"マグロ" には、わからなかった。
何故
それまで<普通>に仲良く出来たのに
――突然
冷たくなったのか。
相互
――家に遊びに行く等して
”他のみんな”がいない時は<普通>に遊ぶのに
何故
"少年" は、
皆の前でからかったり、
邪魔をしてきたりするのか。
わからなかった。
少女には、
少年が社会的に求められている事
を理解出来なかった。
もう少し年が経ち、
少年が青年になった時には
逆が求められるのだが、
その時期には
――実際
――まだ
"マグロ" と "少年" は到達していないし、
その過程を既に通過した者達の
説教や
アドバイスなど、
子供は耳にしないものだ。
"マグロ" と "少年"――
二人は皆の前で暮らす毎日の中で、
距離を離して行った。
それでも――視線は絡んでいた。
絡むや否や――解ける。
それでも二人は互いを思い続けた。
ただ、
"少年" が少年として生きる上で社会が求めている事は、
最悪の結果を生む事になった。