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荘厳なる少女マグロ と 運動会

 "母親" は、話を聞いていた。




 "母親" は、

 娘の夢の内容を”見る”事が出来なかったが、

 ”聞く”事は出来た。




 ただ――あまりその内容に関心を持たなかった。




 寧ろ、

 いつも "姉" の前で黙り込む事の多い娘が、

 自身の夢を

 ――夢中になって

 滔々と話す様を

 ――ずっと

 気にして

 観察していた。




 あまりない事であるから…――少し驚いていた。




 ただ、

 "母親" は

 ――話を聞きながら……

 娘が

 <午後から始まる試合に対して

  強く不安を感じているのだ>

 と思った。




 滅多に弱音を吐かない子供が、

 不安に思っている事とは別の話題で

 <自信の欠如>

 を表現する事は

 よくある事だ

 ――と

 ――"母親" は

 ――過去に学んだ

 ――心理学の知識を

 ――思い起こしていた。




 "母親":

 「――大丈夫だって」




 ”ドラフト”や”ABEEあびー

 について

 話し続ける娘を

 遮る様に、

 言った。




 "マグロ":

 「でもね………」




 "母親":

 「前も言ったよね?――


  『この国では

   許可を取ってない人が

   勝手に

   ”ABEEあびー

   を改造したりしたら

   警察に捕まるんだ』


  ――って」




 "マグロ" は、過去に母親から受けた説明を思い出す。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "マグロ":

 「普通に売ってる”ABEEあびー”が襲ったりしないの?」




 "母親":

 「誰を?」




 "マグロ":

 「――みんな」




 "母親":

 「みんなって”一般の人”の事?」




 "マグロ":

 「ん」




 "母親":

 「ない」




 "マグロ":

 「絶対ない?」




 "母親":

 「聞いた事ない」




 "マグロ":

 「でも、戦争のは――」




 "母親":

 「戦争で使われてる”ABEEあびー”を

  この国の一般市民で持っているヒトなんか

  いる訳ないでしょ!?

  この国では持っていたら

  法律違反で捕まるんだから……

  ――たとえ持っていても

  ――外に飛ばす筈がない。


  飛ばすワケがないし!!」




 "マグロ":

 「でも誰かが作ったり…」




 "母親":

 「”ABEEあびー”の中(内部)は

  スーパー人工知能だって解析に時間が掛かる位

  難しくなってるの。

  普通の人が買えるレベルの人工知能じゃ、

  作ったり

  改造するのは

  無理。

  ブラックボックスっていって……――」



 "マグロ":

 「でもこの前――」




 "母親":

 「この前なに?」




 "マグロ":

 「この前………」




 "マグロ" は、ニュースの話をした

 ――海外から送られてきた荷物のパックに

 ――戦闘用”ABEEあびー”が紛れ込んでいた

 ――という事件に関してのニュースだ。




 "母親":

 「ああ……――だから捕まったでしょう?


  戦地の

  ”ABEEあびー

  を密輸したりしたら

  みんなわかるの。


  ただでさえ”ABEEあびー”は

  動く時

  ――常に

  位置情報を

  ――最寄りの中継地点に

  発し続ける仕組みになっているし――


  この国で

  ”ABEEあびー”が

  外を動き回って

  <壁の目>

  から逃れる事なんて

  出来ないから。


  それに前に言ったよね?――


  普通に売られてる

  調査探索やデリバリー用の”ABEEあびー

  じゃない”ABEEあびー”っていうのは、

  遠隔操作シグナルの波長が違うから、

  すぐわかるの」




 それでも食い下がる娘に――




 "母親":

 「それに

  普通に売ってるヤツ(”ABEEあびー”)に

  戦闘用に近い機能を付けようとしても、

  スリーディメンショナルコード(三次元暗号)で

  プロテクトされているから、

  一般人が開く事自体、

  無理なの。


  スティングなんか入ってたらすぐにわかるわぁ。


  それにね…――


  はぁ……――


  誰かがね――


  国内で買った

  ”ABEEあびー

  をいじろうとしてもね――


  アタック掛けた時点で

  ――自動的に

  警察に

  信号が行く様に

  なってるから。


  だから大丈夫。


  モノは何でも使いようなの。


  ほら………

  ――昔から

  包丁だって

  大勢が買うけど、

  他人にその刃を向ける人は

  少ないでしょ?」




 "マグロ" は、

 "母親" の説明が

 ――ほとんど

 わからなかった。




 "母親" は

 子供の為にレベルを下げて話しているつもりだったが、

 少女にとって、

 すべてを理解するには

 専門的過ぎた。




 それでも――少女は最低限を理解する。




 「心配する事はない」


 という

 <親心>。




 ただ――浅薄な理解は、少女の不安を根絶する役には立たない。




 ―――――――――――――――――――――――――



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