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荘厳なる少女マグロ と 運動会

 "軽鴨" が

 フォーロールジャンプの一回転をして


 ――浮遊しているが

 ――落下し始めている

 石の上に着地した時、


 "マグロ" は

 ――周囲に人がいないのを確認して…

 三回転スピンジャンプをする。




 フリップで。




 "マグロ" の姿は

 ――リンクの隅で

 目立たない。




 人工知能の目

 ――"コーチ" の目

 を誤魔化せる程ではないが、

 それらが驚きながら着目する

 程でもない。




 "マグロ" は先ず、

 片足で”重力ストーン”を

 ――前に飛ばす様に

 蹴り……

 ――蹴られた石は

 ――速度を上げて

 ――"マグロ" の目の前

 ――直線的に

 ――進んでいく………

 "マグロ" はそのまま

 進行方向に背を向け

 ――自由になった

 足を

 後方へ

 ――力強く

 上げる。




 この時点で、片足で立っている状態になる。




 そして、

 石に据えられたままの方の膝を曲げて

 ――フリーな足を

 ――振り子の様に使いながら

 宙へジャンプし――




 回転ピヴォット




 そのまま――




 楽々と

 ――ひとつの

 ――小さな石の上……

 着地した。




 正確には――




 <着石>




 ――だ。




 <片足着石>


 だ。




 着石した後

 空いたままの片足も

 ――先へと飛んで

 ――リンクを彷徨っていた

 石を――




 キャッチする。




 "マグロ" は

 自身の持つ二つの足を

 二つの石の上に置き

 <スプリット>

 をした。




 コーナーを曲がった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 少女 "マグロ" は

 ――同年代の中では

 <出来る方>

 だった。




 身体能力が高く

 ――特にスピンジャンプ(SJ)は

 ――アクセルで

 四回転が跳べていた。




 試合では成功させた事がまだないし…

 ――認定もされていないが……

 跳ぶ事は

 出来た。




 跳ぶだけでなく

 片足着石も

 出来ていた。




 他のジャンプ

 ――離石時に背中を向ける種類の

 ――他の四回転スピンジャンプ(SJ)

 は

 ”50%よりも高い確率”

 で

 成功するレベルにあった。




 離石して

 ――ジャンプしながら………

 宙で前転する


 <フォーロールジャンプ(FJ)>


 <バックロールジャンプ(BJ)>


 は

 ――まだ……

 二回転までしか

 跳べていない。




 [※スピンジャンプは横回転。

   ロールジャンプは縦回転]




 ”重力スケート”の

 ノービスクラスでは

 ――スピンジャンプ(SJ)の場合…

 三回転で十分だとされている中――


 <ジュニア>でも飛べない者がいるジャンプの種類を

 幾多も跳べる事は

 "マグロ" の強みであった。




 それでも……――他人の出来は気になるのだろう。




 実力差がわかっていても

 ――比較される中

 比較される相手を無視する事は

 出来ないのだろう。




 まだ子供なのだ。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "マグロ" は見ないフリしながら………――




 演技者の演技を掠め見ていた。




 真剣な時

 "青年" の事など

 頭にはない。 




 ―――――――――――――――――――――――――




 確かにノービスクラスで

 ――アクセルを除く

 スピンジャンプ(SJ)四回転を高確率で飛べる事は

 素晴らしい事だ。




 ただ、

 "マグロ" の同年代で

 その技が出来る者は

 他にもいた。




 世界を目に向ければ――珍しい事ではなかった。




 <試合で成功させているか否か?>


 という観点から考えると

 ”珍しい事”

 として分類されたカテゴリー

 に該当する状況

 ではあったが、

 人類の記念碑的出来事

 ではなかった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 ”重力スケート”

 <ジュニア>(女子)部門では

 フォーロールジャンプ(FJ)

 ――またはバックロールジャンプ(BJ)の

 二回転を余裕で跳ぶ者がいたし、

 スピンジャンプ(SJ)では

 四回転が普通だ。




 女で世界トップになる事を望む者は、

 スピンジャンプ(SJ)を五回転

 バックロール(FJ)三回転

 を跳ぶ。




 [六回転SJのコンビネーション

  または

  四回転FJのコンビネーション

  を成功させた女子選手は

  まだ誰もいない]




 ―――――――――――――――――――――――――




 音楽が終わり――




 "軽鴨" の演技が終わった。




 "選手4" は、

 自信に満ちた

 ――上気した

 顔で

 決めのポーズをしていた。




 ”白鳥”のつもりで。




 そのまま――脇へ下がった。




 続いて

 "選手5" の名前が

 ――"コーチ" によって

 コールされた。




 「きびきび」


 と

 ――"選手5" が

 リンクの真ん中に行き、

 ポーズを取る。




 片手だけ――高く上げる。




 人差し指を――目立たせて。




 高く上げていない方の手は――腰に据える。




 そして――




 練習場に


 「ル・フラメンコ」


 が流れた。




 "選手5" の――流し目。




 ―――――――――――――――――――――――――




 フラメンコは、

 世界的に<点数>が出ない事で有名だが、

 誰しもが一度はプログラムに使う。




 世界でも、

 <シニア>に上がる前の

 <ジュニア>レベルの子供が

 大人の

 ”妖艶さ”

 を表現して

 <芸術点>

 を上げる為に

 効果的な演題とされている。




 [※「~とされている」


   という表現は


   「~である」


   という表現と

   <情報の性質が異なる>

   事は

   ――此処に書かれるレベル程度のテキストを読む者なら

   わかっていなければならない]




 ―――――――――――――――――――――――――




 "マグロ" は "選手5" の演技を見た。




 "マグロ" は

 ――演技者の脇で

 スピンジャンプ(SJ)の二回転ルッツを行った。




 これも――楽々着石する。




 ただ

 ――そのジャンプは

 普通の二回転SJルッツではない

 ――という事は着目すべきだろう。




 "マグロ" は必殺技を使っていたのだから。




 "マグロ" の必殺技――




 別名:「クラインの壺」。



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