荘厳なる少女マグロ と 運動会
”ABEE”に
攻撃されて、
倒れた敵達。
裁判で
”犯罪者”と
ジャッジされるまでは
自分なりの論理で
<正義>
であった者達。
それまで
威勢の良かった者達が
受け身も取らずに――
「…patter」
「patter……」
――倒れ行く。
皆、
揚げた気焔を飲み込んで、
地面に横たわり………
――弱弱しく……
痙攣していた。
閉め切った場では
威勢よく燃え盛っているが、
換気して
突風吹き荒れる環境になった時の
蝋燭の芯。
そして…――
お花畑に戦ぐ花。
「……bull」
「bull………」
――震える花には
それぞれ、
花弁に囲まれた
人間の顔があり、
さらに
中心には
目があって……――
見つめてくる。
見つめてくる。
そして花は
後輩の顔に
なった。
"マグロの母親":
《あたしのせいじゃない!
わたしのせいじゃ
ないんだ…。
命令だったんだ!!
それだけ!!!》
そして……――
いくら否定しようとも
否定出来ない事を
本人は
知っていた。
そんな………
――ルールの抜け穴を使って
――認定されはしたが
――実際は
――回転不足である様な……
<意見>を
上書きする様にして、
”ひとつの考え”が
"マグロの母親" の
意識に
浮かぶ。
"マグロの母親":
《もし…》
突然・突発や
偶然によって
発生した
<対象>
の様で……――
そうではない考え。
倒れた少女と
倒れた敵達が
並べられる………――
そんなイメージ。
<痙攣と泡>
という共通点。
"マグロの母親":
《……”ABEE”》
"マグロの母親":
《あの子 [運ばれた少女] は
”ABEE”に…》
ただ……――
すぐに
その
――連想によって繋がれた………
自身の考えを
打ち消す。
"マグロの母親":
《……まさか…ね……》
実際、
打ち消す材料なら
いくらでも
あった。
"マグロの母親":
《”戦闘用のABEE”は………
――この国 ["マグロ" の住む国] では……
利用が
禁止されてるんだから…。
だから……――
ありえないんだ!!》
デファクトォ、
”戦闘用のABEE”は
――その国では
存在する事が
禁止されている。
輸入も禁止されている。
たとえ
何かしらの理由で
それが
現れたとしても、
監視社会では
すぐに
確認されるものだ。
地上、
どこにでもあり、
すべての人間を
監視している
<人工知能>は、
”平和利用のABEE”と、
”戦闘利用のそれ”を、
区別する事が
出来る。
市街地で
浮遊する姿が
見逃される事は
まず
ない。
個人による開発も難しい。
改造も難しい。
"マグロの母親":
《バカバカしい………――
ありえない!
たとえ
ありえたとしても……
――そもそも…
誰が
なんの為に
この国で
そんな事
しなきゃなんないん
だろう?――
ここは
戦地じゃ
ないのに……。
戦争だって
最近は
過激になって
ないのに。
それに………――
あの子 [倒れた少女] に
攻撃されなきゃならない様な
理由があるとは
思えない》
そこで……――
自分で広げた
想像の可能性を
否定した。
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自分で
自分を説得する事は
容易い。
説得力とは、
発言者が
他人に対して
論を展開する事によって
発生する
<力>
ではない。
説得されたいと望む者が、
説得される上で、
自身が好ましいと考える者や事から
自己保存に都合の良い材料を
探り出す事で
発生し、
目的を持った自身の後押しとして
――後々
利用するものである。
泥棒は
泥棒の意見に
説得力を
見出す。
知的底辺層は、
無知な自身に
危険のない意見を
支持する。
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"マグロの母親":
《きっと
緊張したか、
何かだろう…》
実際、
”重力スケート”
の大会では
体調が悪くなる人間は
珍しくなかった。
試合で
緊張し、
失神した子供のケースも
ある。
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「foot……」
――"マグロの母親" は
自身の
――明確に
何かを
捉えようとは
していなかった
視線を
逸らした。
その時だった。
床の上に
動きが
見えた。
"マグロの母親" は、
目を凝らす。
既に
運び去られた少女の
倒れていた場所に
”NOMEE”が
いた。
撥ねていた………――
壊れた機械部品を
ボディに
纏わりつかせて。
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