荘厳なる少女マグロ と 運動会
その
”諜報機関の応対用人工知能”には
個性が
設定されていた。
ただ…――
主体性も
主体権も
持ち合わせていない。
それは、
会話こそ
出来るが、
マニュアル通りしか
喋る事が
出来ない仕様に
なっていた。
それでも
それが人と面する時、
人間が
人間と話している様な
そんな錯覚をするに
十分な
”リアルさ”が
在った。
―――――――――――――――――――――――――
「ただ……――
人間と
何が違うと
いうのだろう?
マニュアル通り
――その場に適切な
――<テンプレ>
を
話す者は
――人間の中に
大勢
在る。
自分のメモリーの中から
適切な物を選び出す
人工知能と人間は
一体
何が違うと
いうのだろう?」
―――――――――――――――――――――――――
"諜報機関の応答用人工知能" が
部屋にいる二人に
挨拶した。
二人は
答えた。
横柄だった。
"諜報機関の応答用人工知能" は、
"怪人" と "青年の友達" の
名前と身元を
口頭で
確認した。
"諜報機関の応答用人工知能" は
尋ねなくとも
対話相手の調べは
ついていたが………
――監視社会であるから
――誰が
――何処で
――何をしているかを
――人工知能は
――把握しているし……
――把握していないものも
――把握しているものと
――情報を
――共有する事が
――出来た…
発話行為によって
身元を確認する事は
調査に於いて
決まった手順であり、
前提であった。
<口頭で説明された事(語り)>
と
<人工知能が
――監視によって
既に確認済みの事>に
食い違いが見出されない事が
確認された後……――
"諜報機関の応答用人工知能" は
”通報が在る”
という事実を
二人に告げた。
二人はそれが………――
「間違いではない」
――その事を
知らせた。
手順を踏みながら……――
"諜報機関の応答用人工知能" は
――続けて…
<通報>の内容を
再び
――口頭で
説明する様に、
二人を
促した。
二人は
行った。
・"ライバルコーチ" が怪しい行動を取っている事。
・"外国人" が怪しい行動を取っている事。
・"外国人" の身元が怪しい事。
―――――――――――――――――――――――――
"青年の友達" は
思うがままに
話した。
古代社会の用語を使うのならば――
<直観>
――と云える
現象の把握を
語りを通じて
展開した。
見た事
感じた事を
漏らさず伝えようと
した。
"怪人" も、
話した。
しかし、
"怪人" は
感じた事を
話さなかった。
さらに……――
"青年の友達" が
場にいる為に、
"怪人" は
言うべき情報を選んで
話していた。
プロットの邪魔をしない物だけを
提示していた。
―――――――――――――――――――――――――
"諜報機関の応答用人工知能" は
適切な相槌を交えながら、
二人の話を聞いた。
―――――――――――――――――――――――――
その頃、
地上では
異変が
起こっていた。




