荘厳なる少女マグロ と 運動会
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"怪人" は
見た…――
データとして
登録された
"外国人" の
”親の欄”
が
<空白>
である事。
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"外国人" の
プロフィールには、
”重力スケート協会”
その協会員である事が、
記されている。
現在の仕事も
――肩書も
しっかり
している。
パートナーもいる
という。
しかし……――
親の存在が
<空白>
だった。
男親と
女親を
必要としない
クローンでさえ、
親の欄には
オリジナルの名前か、
["怪人" の場合
"蜘蛛宇宙人" の名前]
社会に於いて認知された
保護者の名前
["クローン" の場合は
"怪人" と "怪人の妻" の名前]
が
埋められているものだが、
"外国人" の
親の欄には
名前と姿が
なかった。
"外国人" が
"マグロ" 達の住む国に
入国した時に
提出し、
アクセス権限を持つ者には
見る事の出来る
表層的
<データ>
そこには
"外国人" の親
のみならず、
親戚の存在さえ
なかった。
親や保護者がいない事。
それは
<"外国人" の国籍が
保障されている国>
特有の現象では
なかった。
"外国人" が
国民として
認められている国は、
市民個人の
詳しい生活状況や
人物の背景を
他国と
――公開状態で
――そして
――アップデート状態で
共有する事を
――国策として
断固
拒否していたが、
親や保護者の名前や
その存在程度なら
共有する事を
問題視して
いなかった。
実際、
その国出身者の多くが
親の存在を
秘密にして
いない。
だからこそ………――
<何かある>
――と
――目撃者が
推論するのは
容易かった。
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現代では
――公開されてはいるが……
――いっぱん市民に対しては
――アクセス制限が為されて
――余程の事がない限り
――アクセスする事が
――禁じられている…
”プロフィール”
その
親の欄が
<空白>
である事は
滅多に
ない。
世界的に
そうである。
親の情報が
非公開状態
である場合は、
「非公開状態である」
と
示される
ものだ。
個人の親が亡くなろうとも……
――行方不明となろうとも………
データは
――半永久的に
保存され、
親の名前が
消される事は
――ほぼ
ない。
或る個人に
<犯罪に巻き込まれる可能性>
<暴力を受ける危険性>
が
――強く
認められる場合は……
――家族を含めて…
身元自体を
――別の物へと
変える事が
推奨されている。
親の欄が
空欄とされている事など
限りなく
少ないのだ。
犯罪者の親が
自分の子供を見限って
縁を切る場合、
犯罪者の
親の欄には、
監督者の名前が
記入される。
親を特定する事の出来ない
――もしくは
――親が
――親権を
――放棄した
孤児の
親の欄には
身元引受人の名前が
記入される。
その様な
現代の事情
にも関わらず、
そこが
<空白>
のままにされている
という事は……――
"怪人":
《怪しく見えるねぇ………》
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