荘厳なる少女マグロ と 運動会
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古代社会には
笑える話が
ある。
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或るところに
或る国が
あった。
国の代表者を選ぶ為、
選挙をした。
投票の結果、
”お笑い芸人”
を
<国の最高責任者>
に選んだ。
「好きだから」
「マシだから」
”お笑い芸人”
が、
何かを言う度に
皆が笑い、
同意する。
共感する。
大勢は、
溜飲を
下げる…――
マトモな専門家を
「堅苦しい」
と敬遠しながら。
しばらくして
”お笑い芸人”
を選んだ
その国民は、
外国を
見る
機会を
持った。
外国では
<国の最高責任者>
を、
選ぼうとしていた。
選挙が
行われた。
”不動産会社の社長”
で
”卑猥な物を売る”
事で
名を売った
#男#
が、
最も多くの
得票数を
集めた。
みんな――
「好きだから」。
その時だった。
”お笑い芸人”
を
<国の最高責任者>
に選んだ国の国民は、
”卑猥な不動産会社の社長”
を
<国の最高責任者>
に選ぼうとする国の国民を
「ろくでなし!」
「見る目がない!!」
「馬鹿だ!!!」
と非難したのだ。
古語では
こういう状況を――
「五十歩百歩」
――というそうだ。
そして
その後、
どちらの国民も
最悪が起こっても
知らんぷり。
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因みに、
賢い者は
”お笑い芸人”
も
”卑猥な不動産会社の社長”
も
選ばない。
ただ――
賢い者は
数の原理の中で
優先
されない。
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"怪人":
「それでぇ……
話とは(わ)ぁ………
なんだねぇ……?」
質問に対し、
"青年の友達" が
口を開き、
切り出そうとした――
その時だった。
"怪人" は
態度を
変えた。
"怪人":
「ちょっとぉ…
失礼ぃぃぃ……」
仮面は外さなかった。
"青年の友達" は
目の前の変化を
確認し、
言い澱む。
"怪人" が、
何食わぬ顔で
指を
動かす。
その目には、
<アンスタント・テキスト>
が
示されていた。
"怪人":
《ママン………》
それは
暗号化されて
いなかった。
ただ……――
目の前にいる
"青年の友達" には、
<何が行われているか?>
が
見えないから、
何も
問題では
ない。
"怪人":
「どうぞぉ…
必要なぁ……
話をぉ………
してぇ……」
"怪人" は
話を進めるよう
促しながら、
手を逆さにして
掌を
相手に
見せていた。
宙を
睨んでいた。
"青年の友達" は
その時、
間を
置いた。
その間に
"怪人" は
テキストを
開いていた。
通信は
"怪人の妻" から
であった。
「至急」
――と記されていた。
"怪人":
「どうぞぉぉぉ…
話をぉ……
続けてぇぇぇ………」
"怪人" は
"青年の友達" を
見て
いなかった。
"青年の友達" は
それを知りながら、
"怪人" の命令に
従った。
三重奏の
始まりだ。




