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荘厳なる少女マグロ と 運動会

 ―――――――――――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――――――――――




 "怪人":

 《ァンファン…

  ――ソリテールゥ……。

  ァンファンン………

  ――ォートリテールゥ……。

  ジュヴドゥマンンン…

  ――ラリュヌゥ……》




 ―――――――――――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――――――――――




 壁が塞がった。




 その時。




 <コンフェレンスルーム>

 の中に

 ”動き”

 が

 発生した。




 部屋の隅で、

 静止していた物が

 跳び上がった。




 "怪人" と "青年の友達" に

 向かって

 跳んだ。




 ”NOMEEのみー

 だ。




 ”NOMEEのみー

 は

 ――丸く

 軌道の上

 <サイクロイド>

 を描いて

 動いていた。




 ジャンプした

 ”NOMEEのみー

 は

 "怪人" 達と部屋の隅

 その間の距離のうち、

 中間地点で

 一度

 着地する。




 そして………――まっすぐ。




 "怪人" 達に

 跳びかかった。




 "怪人":

 「カレ!」




 "怪人" は

 命令した。




 ”NOMEEのみー

 は、

 止まった。




 "怪人" の目の前で

 停まった。




 宙に浮かんでいた。




 ただ……――


 宙に

 浮かび続けては

 いなかった。




 落下を始める頃…――




 "怪人":

 「カレ!!」




 音声認証――完全。




 そして……――落ちた。




 垂直だった。




 衝突時、

 音は

 なかった。




 壊れも

 しない。




 "怪人":

 「クペ!!!」




 以前の入室者が

 置いていった

 少量のほこりに

 塗れたまま、

 ”NOMEEのみー

 は

 動力を

 停止し

 ――ただ

 床の上に

 横たわった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 現代では

 音声認識技術こそ

 進展したが、

 機密度の高い場所での

 その利用は

 ――現代でも

 優先されて

 いない。




 音声は

 加工が

 しやすいし、

 特定と認識に於ける

 <決定的さ>

 の割合が、

 他の認証方法と比べて

 低いのだ。




 映像も

 ――ある意味

 同じだ。




 壁への

 <タッチ>

 の方が

 信頼性が

 高い。




 壁に

 人が

 触れる事で、


 ”生体認証”


 が

 ――常に

 行われる………――


 それは

 人間を

 特定する上で

 最も確実な

 技術

 である。




 犯罪を目的とする者が

 行う

 <人間存在の偽造>

 を

 防ぐという事でも

 有効だと

 証明されて

 いる。




 人間は

 自身の色を

 変える事が

 出来るし、

 形を

 ――ある程度

 ――自由に

 変形させる事が

 出来る。




 音声や映像は、

 それら変化によって

 揺らぐ対象を

 正確に

 ――絶対的に

 特定する為に

 必ず役立つ方法である

 とは

 言えない。




 音声や映像による

 間接的照合方法は、

 直接的である

 生体認証の

 バックアップ程度

 の役割として

 利用されている。




 ”NOMEEのみー

 程度の

 単純な機構を持った

 対象を

 扱うには

 音声認証で

 十分である……――


 それだけだ。




 実際、

 ”NOMEEのみー

 を通じた

 データ流出事件も

 ――まだ…

 起こっていない。




 ”NOMEEのみー

 を違法改造して

 アップグレードした物が

 <壁の目>

 をすり抜けた

 そんな例も

 ――まだ……

 聞いた事が

 ない。




 十分なのだ。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "怪人" と "青年の友達" は

 ”NOMEE(のみー)

 を見ながら、

 立っていた。




 足元には

 二人が

 上から運んできた

 ゴミが

 付着していた。




 ただ………――二人は気にしなかった。




 二人は

 <机>

 と

 <椅子>

 のある場所まで

 歩いた。




 "怪人" は

 床に横たわる

 ”NOMEE(のみー)

 を

 無視した。




 ―――――――――――――――――――――――――




 それは

 人間ではなく、

 動物ではない……――


 そんな存在。




 高度な人工知能もない。




 多くの人間が好む様な

 <外見>

 を

 していなかった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 ”NOMEEのみー

 は、

 ほこりに

 塗れて

 いた。




 "怪人" は

 ”NOMEEのみー

 に近づくと、

 爪先で

 蹴り飛ばした。




 無関心だった。




 ”NOMEEのみー

 は、

 抵抗せず

 ――逃げもせず

 蹴られるままに

 転がった。




 そして――動かない。




 それを

 "青年の友達" が

 見ていた。




 何も言わなかった。




 見ないフリを

 した。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "怪人":

 「そういえばぁ…

  そろそろぉ……

  薬のぉ………

  時間んんん……

  じゃないぃ…

  かねぇ……?」




 "怪人" は

 上座の椅子に

 座った。




 "青年の友達" は

 尋ねられた事を

 否定した。




 実際

 その時間だったが、

 その時

 摂取したいと

 思わなかったのだ。




 意識の明瞭さが

 揺らぐから。




 "青年の友達":

 「………失礼します」




 "青年の友達" は

 一礼してから

 椅子に

 座った。




 二人は

 机を挟んで

 向き合っていた。




 "怪人" は

 足を

 組んで、

 ”リラックス”

 を

 見せていた。




 "青年の友達" は

 硬直していた。




 "怪人" は

 座ったまま

 指を動かして、

 <コンフェレンスルーム>

 を

 コンフィデンシャルな

 <状態>

 にした。




 ―――――――――――――――――――――――――




 その

 <状態>

 になると、

 部屋の中の

 音声と映像は

 ――機密度の高い記録として

 ――保存こそ

 ――されるが

 余程の犯罪調査でない限り

 明らかになる事のない

 ――高度なアクセス権を

 ――保有する者でさえ

 ――アクセスする事が

 ――難しい

 データとなる。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "怪人" の作業中、

 "青年の友達" は

 ――活動を停止した

 ”NOMEEのみー

 を見ていた。




 いくら見つめても

 動かなかった。



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