荘厳なる少女マグロ と 運動会
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"怪人":
《ママン…
――ヴォヮシヴォートルアンファンン……。
ママンンン………
――アントリストゥアンディビジュゥ……。
トゥリステァプリュイールゥ…
――ジュヌヴトゥシュパ……》
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"青年の友達" は
壁の上を流れる
映像を
見続けた。
映像の中に、
大ザールの中
<観客席>
と
<スペースリンク>
の間にある
<通路>
を撮った
枠組みが
在った。
<通路>
には
”恋する少女”
が
いた。
"マグロ":
《いた》
"マグロ" は
憂鬱
と
二つの
”重力ストーン”
を
抱きながら、
遠くを
見つめていた。
<観客席>
を見つめていた。
それまで
ジャンプの事ばかり
考えていた
少女は、
座り
項垂れる
"青年" を
見つけていた。
見つけられた "青年" は、
少女の視線に
気付いていない
様子を
見せていた。
だからこそ………――
"マグロ" は
見つめ続ける事が
出来た。
そして
二人は
”他の誰か”
から
見られている事に
気づいて
いない。
気にして
いなかった。
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ジャンプについて考え、
次にまたジャンプについて考える
その境目で、
少女は
<恋>
について
考えていた。
ただ……――
それは
<恋>
の形を
していなかった。
それは
”イメージ”
であった。
過去に在った事――体験した事。
《あの時の》――
「タッチ」
そして…――
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過去の映像を見ていると
身体に温かみを覚える
事がある。
それは
”暑さ”
に転じる。
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少女は
皮膚の上を
静電気が八人
百メートル走をした
そんな様に
思った。
最後のランナーが走りきり、
「prick」
が
――皮膚から
なくなった
と思った時、
"マグロ" は
――自ら
身体を
震わせた。
少女は
首を
振った。
恋を
否定していた。
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そんな
<少女の恋>
<葛藤>
に関して、
"青年の友達" は
興味を
持たなかった。
そもそも
"マグロ" に
関心を持って
いなかった。
寧ろ、
”"ライバルコーチ" がいる”
事に、
注意を
払っていた。
"ライバルコーチ" は
<通路>
で、
”"鼈"
ではない少女”
に
話しかけていた。
その挙動を
"青年の友達" は
目で
追っていた。
"怪人" の手が止まった。
"青年の友達":
「声を聞く事は
出来ませんか?」
"怪人" に
尋ねた。
"怪人" が
目を
動かした。
"怪人" は
何も
言わない。
"青年" は
壁を
指さした。
本人は
――特定の画像を指さず
出鱈目に選んだ
つもりで
あったが、
指差された場所は
"ライバルコーチ" を映した映像
その正反対
だった。
その
指先が示す方角は、
"外国人" が映る動画からも
離れていた。
無差別に選んだようで
作為的に行った選択を
示したまま――
"青年の友達":
「この映像の音声って……――」
"怪人":
「君には(わ)ぁ………
<無理>
だしぃ……
許可するぅ…
つもりもぉ……
ない」
語尾が
<断固>
を与えていた。
眩い………――目力。
一方では植物の生育を助け
他方では植物を枯らそうとする……――
そんな光。
そして…――
それは
大抵
無関心
である。




