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荘厳なる少女マグロ と 運動会

 興味を持ちたくないのだから。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "ライバルコーチ" が

 アドバイスを切った。




 "怪人" が話している事を

 聞いていなかったが、

 "怪人" が話している事には

 気付いていた。




 苛立っていたが、

 苛立ちを見せなかった。




 人間が尊ぶ…――自制。




 仲間を売る為に

 ――生きていく為に

 必要だった……――


 抑制。




 それと共に

 "ライバルコーチ" が

 "怪人" を

 見た。




 "ライバルコーチ":

 「失礼ですが………――」




 相手が


 「邪魔である」


 事を

 明確に述べずに

 述べて、

 相手との対話を

 打ち切ろうとした……――




 その時。




 "怪人":

 「わたしは見ています」




 突然、挿入された…――言葉。




 外国の……――言葉。




 言葉。




 "ライバルコーチ" は

 "怪人" を

 見つめていた。




 "ライバルコーチ":

 「――………何か仰いましたか?」




 動揺はない。




 漣は――目に見えない。




 "怪人":

 「ところでぇ……

  今日はぁ…

  <外国>

  からぁ……

  お客さんがぁ………

  たくさんんん……

  いらしてぇ…

  いますぅ……

  ねぇ………」




 "怪人" は

 <観客席>

 を見続けていた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 それを

 "すっぽん" が

 見ていた。




 "すっぽん" は

 ――ただ

 大人の視線の動きを

 目で追っていた。




 "ライバルコーチ" は

 "怪人" を

 見ていて――


 そんな "ライバルコーチ" に

 見られている

 "怪人" の視線の先……――


 "すっぽん" は

 眼鏡グラッシズの度を

 合わせた。




 <観客席>

 には

 人が

 いる。




 疎らであるが…――集団。




 熱心に

 <スペースリンク>

 を見る者が

 いる。




 そして……――お喋りをしている者がいる。




 多くは――同国人。




 その集団の中に

 <外国人のグループ>

 がある。




 "すっぽん" が

 挨拶を済ませた

 外国人達。




 "すっぽん" は

 その中に

 先程

 ――"マグロの姉" や

 ――”重力スケート協会員”

 ――などと一緒にいた時………

 自身に


 『あなたは大丈夫か?』


 と

 慰めを投げかけてくれた

 その人の姿を

 見つけた。




 その人は

 <スペースリンク>

 を、見ていなかった。




 "すっぽん" のいる方に

 顔を向けていた。




 "すっぽん" は

 その人と

 目が会った様な

 気がした。




 すると……――




 その人物は

 そっぽを

 向いた。




 最初から

 見ていない事を

 示すかの

 様に。




 "すっぽん" は

 その人物と

 目が会ったのは

 気のせいだろう

 と思った。




 その時。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "怪人":

 「わたしは、あなたを、見ています」




 "怪人" が

 "ライバルコーチ" に

 話しかけた。




 脅迫じみていた。




 笑顔は

 なかった。




 "ライバルコーチ":

 《気持ち悪い話し方…》




 ―――――――――――――――――――――――――




 外国語で発された為、

 "すっぽん" には

 "怪人" が

 何を言ったのか、

 わからなかった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "ライバルコーチ" は、

 自分が

 <ボーダーライン>

 にいる様に

 思った。




 "ライバルコーチ":

 《あの頃……――》




 国籍を変える前、

 仲間の潜伏情報を売っていた頃に

 いつも

 立たされていたライン――


 命を賭けた、綱渡り。




 ―――――――――――――――――――――――――




 ”怪しさ”

 が

 目の前に

 在る。




 だから、

 "ライバルコーチ" は

 警備セキュリティ

 に通報しようと

 思った………――


 <国民>

 として。




 怪しい芽を

 まえって

 摘んでおく為に。




 その時。




 "怪人":

 「では――失礼ぃぃぃ……」




 素早く言葉が述べられ…――


 "怪人" は

 立ち去る。




 消え去った。




 退場は、春の雨の様だった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 空間には

 光が満ちて……――


 すべてが可視対象。




 揺れて………――見える。




 そこに音として響くは――口笛。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "すっぽん" が

 "怪人" のいた場所から

 視線を逸らすと――


 "ライバルコーチ" が

 睨んでいる

 ――その横顔

 が、

 見えた。




 それまで見せた事のない様な

 険しい顔で

 "怪人" がいなくなった場所を

 見つめていた。




 その時、

 "すっぽん" の抱く

 不安の原因が

 シフトした。




 "すっぽん":

 「――……大丈夫ですか?」




 "すっぽん" が尋ねる番だった。




 "ライバルコーチ" は

 "すっぽん" を

 見た。




 顔付きは

 和らいだが、

 険しさが

 残っていた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "ライバルコーチ" は

 咄嗟に…――


 「自分の心配をしろ!」


 と言いかけたが……――




 "ライバルコーチ":

 「――大丈夫………」




 ――そう

 短く

 発した。




 そして

 <仮面>

 の様な

 ”笑顔”

 を向けた……――




 ”イルカピターノの仮面”。




 目の周りが

 固く

 動かない。




 それは

 "怪人" がよくする顔付きと

 同じだった。




 そして

 人間ひと

 仮面から

 表情を読み取るものだ――


 感情を

 視覚的に

 読み取る事が

 自分には可能だと

 勘違いしている。




 多くは

 仮面の

 <目力めぢから

 を褒め称える。




 そして…――




 仮面が担う役割の上で

 人間関係は

 出来ていて、

 それによって

 社会は

 動いているものだ。




 なんて――ロールプレイングゲーム。



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