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荘厳なる少女マグロ と 運動会

 "マグロの姉" が

 ――軽く

 BJ [バックロールジャンプ] を

 した。




 一回転は、

 成功した。




 "マグロの姉" は

 石の上で、

 安堵の溜息をついた。




 その時。




 ブザーが鳴った。




 宙に浮いていた選手達は

 動きを止めた。




 そして――


 「…langsam」


 「langsam……」


 ――と、落下を始めた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 そのさまを――大勢が見ていた。




 大勢の中に

 ”競技者の家族”

 その姿がある。




 それより………

 ――何より……

 選手達の落下を

 熱心に見つめる

 ”重力スケートファン”

 の姿が

 ――大勢

 在った。




 目立っていた。




 <公式練習>

 の設定された時間帯、

 会場の入りは

 疎らであったが、

 ”それら”

 の姿は

 多かった。




 ”それら”は

 <ライト>

 な

 ”重力スケートファン”

 では

 なかった。




 試合だけでなく、

 試合前の公式練習から

 少年少女達の出来を

 目で追う…――


 ”ヘビーファン”。




 即ち――


 ”マニア”。




 ―――――――――――――――――――――――――




 ”重力スケート”

 の

 <地方大会>

 が開催される

 その会場

 ――大ザール

 は、

 <古代闘技場>

 の様な

 円形

 であった。




 場の中心に……――


 <スペースリンク>

 がある。




 それを取り囲む様に………――


 選手だけが立ち入りを許された

 <通路>

 がある。




 それを取り囲む様に……――


 <観客席>

 がある。




 そこに

 ”マニア”

 達が

 いる…――


 座っている。




 将来性のある子供達を

 見つけようと、

 椀の形の自身の目を

 皿の様に

 していた。




 <通路>

 と

 <観客席>

 は

 ――行き来できない様に……

 <壁>

 で遮られていた。




 そして………――


 その

 <観客席>

 を取り囲む様に

 また

 <壁>

 がある。




 建物の

 <外壁>

 に該当する

 <壁>

 であり、

 空間の

 最も外側に当たる

 場所である。




 そして

 ――そこで……


 <壁の目>


 が見ていた。




 自身の内側にて展開する

 すべての

 ”一挙手一投足”

 を、記録していた。




 即ち…――




 「パノプティコン」




 ――ならぬ




 「パノプテース」。




 何故なら……――




 監視の視点は

 中心に

 ないから。




 ―――――――――――――――――――――――――




 古代社会では

 ――社会秩序を守るという名目で

 場の監視を行う為に

 人間が利用されていた。




 ただ、

 人間が人間を使うには

 タダでは

 難しい。




 文明の進んだ現代でさえ、

 社会から経済活動(意識)を切り離す事は

 極めて難しいのだ。




 為の――報酬。




 監視しなければならない場が

 多ければ多いほど、

 多くの人間が

 必要とする………――


 為に、

 人件費用の高騰は

 自明である。




 仕方のないことだ――人工知能が生まれる前なのだから。




 その為なのだろう……――


 当時、

 圧迫する人件費をミニマムにする

 最も経済的な方法として、


 「パノプティコン」


 が想起されたという。




 最も少ない人間で、

 大勢の人間を監視

 ――管理

 する社会。




 それは

 ――ひとつの


 <理想>


 であった。




 ただ人間は

 理想を現実に適応させて

 文明を進めるものだ。




 実際、

 人工知能の発達以前の

 建築物から

 ――提案時は

 ――単に

 ――”理想”

 ――でしかなかった


 <パノプティコン的要素>


 を

 ――いくらでも…

 見つける事が出来、

 人間が

 理想を

 活用して

 進んできた事

 が

 ――現代でも

 ――遺物から

 わかるのだ。




 特に

 古代初期の監視カメラは

 二次元的に対象を撮る物から、

 三次元的撮影へと移行する際に


 <パノプティコン型>


 のアイディアが用いられた……――




 即ち、

 監視対象の場

 その中心一点に

 カメラアイを置き、

 中心点の周囲を

 二次元ではなく

 三次元的に捉えるのだ。




 無論、

 人工知能が

 監視の役を

 務める様に

 なってから、

 あまり


 <パノプティコン・モデル>


 を見かける事は

 なくなった。




 対象を囲い、

 外側から内側を見る


 <パノプテース・モデル>


 で十分なのだ。




 <壁の目>

 の方が、

 確実

 なのだ。




 ―――――――――――――――――――――――――




 <壁の目>

 が

 会場にいる

 ”マニア”

 達を

 見ていた。




 ”マニア”

 達は見ていた。




 "マグロの姉" が

 四回転SJを成功させる所。




 "マグロの姉" が

 別の少女に向かって

 微笑む所。




 そして………――


 「孔雀の尾」(ピーコックステイル)。




 或る者は――真摯に。




 或る者は――卑猥に。




 見ていた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 どちらにしろ……――


 皆、

 <映像を見ている>

 事には

 変わりが

 ない。




 会場にいながら、

 映像を見ているのだ。




 その目を使って

 目の前にある物を

 映像で

 見ているのだ。




 目に当たる光を使って

 見たい部分を

 ピンポイントで

 拡大したり、

 俯瞰で見たり、

 ズームアウトしたり

 する。




 見る物は

 調節されている。




 目だけを使って

 ――生得的能力だけで…

 見る者など

 ――もう

 いないのだから。




 ―――――――――――――――――――――――――



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