表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/1061

荘厳なる少女マグロ と 運動会

 "マグロ" は答えなかった。




 古典的小説では、

 暗雲垂れこめ、

 雷鳴轟く様な

 <状況>

 その中…

 ――たとえ

 ――外が

 ――曇ろうとも……

 室内は

 光に

 満ちていた。




 子供の笑い声が――した。




 時計を見ると、

 "マグロ" の為に設けられた

 公式練習の時刻が

 先程より

 大幅に

 近づいていた。




 "マグロ":

 「そろそろ

  公式練習ウォームアップ

  に行かないと………」




 "マグロ" は

 "クローン" と話した事を

 後悔していた。




 時間の有効活用――その可能性。




 お喋りという――無駄。




 ただ――後悔しきれなかった。




 どちらにしろ……――


 結果は同じ。




 "クローン" と話した時間を

 <シュヴィメン>

 に割り当てたとしても…

 ――"マグロ" の体調を

 ――鑑みれば

 目立った効果は得られず、

 疲労が貯えられる

 だけ。




 そして

 <知る>

 為の

 第一歩

 が

 長引かされる

 だけ。




 "マグロ" が腰を浮かせると――




 "クローン":

 「あ!」




 突然、声が上がった。




 "マグロ" が――見た。




 "クローン":

 「伝える事がある!!」




 "マグロ" は、

 間を取った。




 "クローン" は切り出さなかった。




 服を

 弄っていた。




 だから――


 "マグロ":

 「もう行くから――」




 "クローン":

 「チューコク――」




 "マグロ" は最初、

 相手が

 <外国語でも話したのか>

 と思った。




 ただ

 すぐに

 「忠告」

 という単語を

 思い出した。




 その時。




 "クローン":

 「――気を付けて下さいね……」




 "クローン" は

 道具を

 取り出した。




 "マグロ" は

 その正体を

 知っていた――


 "母親" が使っているのを

 見た事が

 あるから。




 盗聴遮断装置。




 それも

 子供の玩具ではなく、

 "母親" が仕事をする時に

 使用している物と

 極めて

 よく

 似ていた。




 "マグロ" が


 「何を?」


 と尋ねる前に………――




 "クローン":

 「今日、

  ここで

  <何か悪い事>

  が起こる」




 推理小説の導入部分に登場する

 ”予告状”

 の様な

 暗示。




 掌に

 盗聴遮断装置を乗せながら、

 "クローン" は続ける……――




 "クローン":

 「ボクの計算では――


  君の周りで

  ”何かひどい事が起こる”。


  その可能性が

  すごく

  高い」




 "マグロ":

 「何か、って…?」




 当然の疑問。




 対し――




 "クローン":

 「それはわからない」




 "クローン" は

 "マグロ" に

 続けさせなかった……――




 行かせは

 しなかった。




 "クローン":

 「起こるまでわかりません。


  ただね………――


  <バタフライエフェクト>


  ――ってわかります?」




 "クローン" は

 "マグロ" に尋ねておきながら、

 答えさせなかった。




 "クローン":

 「――知らないなら

  イイです。


  君程度の頭なら

  知らなくて

  トーゼン [当然]。


  君の年じゃ

  ――学校じゃ

  習わない

  事だから――」




 ひどく失礼な事を

 言ったが、

 "クローン" は

 反省の様子を

 見せなかった。




 "クローン":

 「世界にある

  <モノとモノの結び付き>

  と

  <ジョーキョー [状況]>

  を調べると、

  後で起こるかもしれない事が

  わかるんですよ。


  でもね……――本当に起こるかどうかはわからない。


  起きるまで…――はっきり言えない。


  カクリツ [確率] でしか……――喋れない。


  で、

  ボクの計算では

  今日、

  この場所で、

  <ヒドい事が起こる>

  カクリツ [確率] が

  高い。


  すごく――高い。


  それも………――君の周りで。


  起きて欲しくないけど、

  起きるか

  起きないかは、

  わからない。


  だから……――気をつけて下さぃぃぃ…」




 言葉尻の母音が

 ――"クローン" の父親がする様に……

 響いた。




 "マグロ" は

 腹に

 <差し込み>

 が来た様に

 思った。




 螺旋の様に腹部に渦巻く………――それ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ