荘厳なる少女マグロ と 運動会
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いくら
男女平等が謳われても、
子供しか見ない
アニメ等の表現媒体では
女性に対する
特別な配慮が
なくなる事は
ない…――
それでも……
以前よりは
マシに
なっている。
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それでも
”主婦と母親”
が、
いなくなる訳では
なかった。
そんな或る時
或る指摘が
為された。
どれだけ
”主婦・母親”
の
<仕事>
を金銭的価値に換算して
市場的価値を主張しようとも、
実際には
それらは
#無収入である#
という事。
つまり、
”主婦・母親”
の
<労働>
は
――どの様に
――金銭的価値に変換して
――評価しようとも………
結局、
#ゼロ#
なのだ。
ベビーシッターやハウスキーパーは
賃金報酬が実際に支払われる
”職業”
である。
しかし、
”主婦や母親”
は
”主婦や母親”
であり続け
<家事や子育て>
をし続ける限り、
その仕事から
現金収入は得られない
という現実。
それは
「高額の数字が記入されているが、
不渡りになっている
<手形>
の様なものだ」
という意見が
――当時の文献に……
ある。
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稼ぎ手に依存した
”主婦・母親”
は、
常に稼ぎ手に捨てられる危険性と共に
生きなければならない…――
そんな時代。
状況に気付いた
”主婦・母親”
が、
稼ぎ手とは無関係に
市場で
働き始めた――
<家事や子育て>
ではない仕事で。
<家事や子育て>
をする場合、
”主婦や母親”
という肩書を捨てて、
ベビーシッターや
教師、
ハウスキーパーや
調理人等、
名前を変えた……――
自分の家族ではなく、
他人の世話を
するのだから。
そして、
実際に目に見え
使う事の出来る
<金銭>
を手に入れるのだ――
他人に依存しない為。
いつ捨てられても
困らない様に――
覚悟するのだ。
稼ぎ手の収入だけで
生活が出来る者も
――そうでない者も
働くようになった………――
自分の家庭の
<家事や育児>
を疎かにしながら。
”主婦や母親”
ではない
<女性>
だけではない。
すべての女性が
働く事が
当たり前になる――
男性と同じ様に。
そして……――
家族内の主な稼ぎ手が
男である必要も
なくなっていった。
家族や社会内の性役割が崩壊した――時代。
社会が
性別で
何かを
規定する事は
少なくなった。
実際…――
問題は何もなかった。
昔なら
”主婦・母親”
で終わっていただろう
多くの女達は
――男達と肩を並べ
働く事で
――自身が優秀である事を
証明していた。
社会に於いて、
女は
最早
守られる存在では
なくなった。
「自分の身は
自分で守る」
女は、男と対等に働く者であった。
女は、男と対等に闘う者であった。
女だからと容赦する者は
性差別主義者である。
そして
男女の平等が
達成に近づいていく。
そして――クローンの時代が来る。
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もう
”母親”
は
必要では
ない。
”主婦”
も
必要では
ない。
女だからではない。
男がそれらになっても
必要性は
生じない。
よって勿論……――父親も必要ない。
子供の誕生に
人間の母親の身体は
――必ずしも
必要
ない。
父親も
すべき事を
持たない。
クローンには、
父親・母親という存在自体
最初から
いない。
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無論、
クローンが
愛の結晶ではないからといって
愛されない訳ではない。
親の愛情なら
――男女関係なく
適切な者が
与える。
男女平等の世の中では
「お腹を痛めて産んだ母親だから
子供に愛情を注げるもので、
お腹を痛めない父親には
わからない!」
という
古代社会で展開し
大勢に
「マトモだ」
と考えられていた主張は
単に
父親に対する偏見
と見做される――
それは
<性差別的発言>
である。
父親の中にも、
子供に強く
愛情を注いだ例が
たくさん
あるのだから。
それに
――現代では
”母親”
は、
出産時に
お腹を痛める必要が
ないし、
胎児が
母親の腹の中に
――必ずしも
居続けなければならない
訳ではない。
というより――
子供の誕生に
性そのものが
必要なくなった。
古代社会に於いて
性に関する議論は活発であったというが、
最早
性そのものが
議論の中心になる事は
あまり
ない。
男女平等が
決定的であるなら、
性に関する分類に根ざした言及は
淘汰される。
「<男らしく>」
「<女らしく>」
など
”原始人”
の話だ。
そして
”重力スケート”
の世界には
”原始人”
と同じ様な頭を持つ人間が
たくさん
いる――
それだけの話だ。
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そんな時代に、
"クローン" は
"マグロ" に
尋ねる………――
「……お母さんって必要?」
鼻で…――
「Kunst!」
――と笑いながら……。




