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荘厳なる少女マグロ と 運動会

 "マグロ" は

 答えなかった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 栄養学を勉強した為に、

 ”重力スケート選手”

 が体力向上の助けとして取る


 <栄養剤>


 について、

 "マグロの母親" は

 詳しかった。




 特に

 酢酸について

 知識が

 豊富であった。




 人工知能に依存する必要がない程。




 しかし――


 "マグロ" の家で、

 家族に

 栄養を

 実際に

 与えていたのは、

 "マグロの父親"

 であった。




 料理を

 ――ほとんど…

 "マグロの父親" が

 準備し、

 家族全員に

 提供していたのだ。




 "マグロの母親" が

 <家事>

 という領域に於いて

 するべき事は

 ――ほぼ

 無かった

 ――と云えた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 現代社会では

 技術発展のお蔭で……

 ――家のメンテナンスに於いて………

 人間がしなければならない事が

 少なくなった。




 料理に関して云えば……――


 機械に

 食材の調理を

 ――全自動式に

 頼む事も

 可能だ。




 それでも…

 ――現代でも……

 人間は

 ――ほとんど

 自身の手を使い、

 料理をする

 傾向にある。




 愛情の問題ではない。




 単に

 その方が――


 <人間のくち

  より

  合う物を

  作る事が

  出来る>


 ――それだけだ。




 食材の過熱や

 味の添加は

 機械でも

 出来る。




 量の配分調整は

 人間より

 人工知能の方が

 正確だ。




 ただ、

 <海老・蟹の殻を剥く>

 といった作業や

 <蛙の内臓と皮を取り除く>

 等

 ”美食の為に必要な作業”

 は、機械では難しい為に

 ――どれだけ文明が進んでも

 手作業で

 行われている。




 また

 機械は

 ”魚の眼肉”

 などの高級食材を

 最大限得られる様に

 選別する事は

 出来ない

 という欠点も

 持っている。




 何より人は

 ――いつの時代も

 調理と云う行為を望む。




 機械が加熱する事で自動的に出来上がった料理よりも、

 青空の下、自分の手でバーベキューする事を好むのだ。




 「おいしい」


 という料理で

 満足を得る事を望む者は、

 手作業で

 それを為さなければ

 ならない。




 "マグロ" の家では

 "マグロの父親" が

 そうしているだけだ。




 "マグロの母親" は

 していないだけ。




 ―――――――――――――――――――――――――




 因みに

 ――古代社会にて

 ――”主婦しゅふ

 ――という

 ――ハウスキーパーが

 ――いち日のうち

 ――膨大な時間を費やしていたという………

 <掃除>

 は

 ――いま

 ――すべて

 機械が

 執り行っている。




 人間の出る幕はない。




 現代では

 掃除用の

 機械がある。




 ”ABEEあびー

 によく似た機械。




 ただ

 ”ABEEあびー

 とは呼ばれていない。




 ”NOMEEのみー

 である。




 ”ABEEあびー

 よりも

 性能が低い

 機械。




 <壁の目>

 が

 部屋の中

 ゴミの発生を

 確認すると、

 命令が送られ、

 瞬時に

 ”NOMEEのみー

 は

 ゴミの位置を特定し、

 ゴミの所へ

 飛んでいく。




 部屋の中を転がったり、

 ジャンプする等して

 埃を吸い取る

 ――てんほど

 ――大きさの

 機械。




 古代社会にも

 ”掃除機”

 は存在したというが、

 それは

 大型で、

 <象>

 の様な形をしていた……――


 と

 記録には

 残っている。




 即ち、

 ”NOMEEのみー

 の何百倍もある

 大きな機体を

 引き摺りながら、

 長いホースの先で

 ――象が水を飲む様に

 床のゴミを吸い取り、

 丸い機体に溜め込むのだ。




 ”NOMEEのみー

 は、

 そうでは

 ない。




 その

 小さく

 丸い

 ボディに

 直接

 ゴミを

 引き付けるのだ。




 機体内部に

 屑を

 飲み込む様な事は

 ない。




 ただ

 ボディの表面に

 付着させるだけだ。




 ゴミを引き付けて…――


 転がりながら

 丸くなる。




 強い吸引力で

 埃を身に纏い、

 最後には

 <灰色の雪玉>

 の様になる。




 そして

 一定量

 ゴミを身に着けると、

 ”NOMEEのみー

 は

 ――自動的に

 ゴミ箱に行く。




 そして、

 機体から出る引力を解除し、

 ゴミを

 勝手に捨ててくれる。




 そして

 次の命令が下るまで

 待機するのだ。




 "マグロの母親" が出る幕はない。




 ―――――――――――――――――――――――――




 衣服の洗濯事情は

 昔とあまり

 変わっていない。




 機械に依存している。




 そして

 抗菌技術が

 いくら進展しても、

 人は身に着ける服を

 洗濯したがる

 ものだ――


 水を使う機会は

 減ったが。




 ―――――――――――――――――――――――――




 以上の様に、

 <家事作業>

 に

 人間の手は

 必要ない……――


 そんな時代なのだ。




 大昔では

 女性・母親が主に

 ”主婦”

 という職業に準じて

 <家事>

 に骨を折っていた

 という。




 それも、無償で。




 しかし………――もうその必要はない。




 機械が代行しているから。




 ”主婦”

 という職業自体が

 必要ない……――


 そんな時代なのだ。




 多くの女性・母親が

 ”主婦”

 となる事が求められていた時代を紐解くと、

 ”主婦たち”

 は

 <家事>

 の名目で、

 ”就労”

 や

 ”学業”

 そして

 ”兵役”

 を

 免れていた事が

 わかっている。




 昔

 ――機械の助けを

 ――あまり

 ――借りる事の出来なかった

 ――時代に於いて

 <家事>

 は、

 大変な作業で

 あったから。




 しかし、もうその様な時代ではない。




 女が

 <家事>

 で

 苦労する――


 そんな時代ではない。




 女が勉強する事は――当たり前なのだ。




 女が働く事は――当たり前なのだ。




 女は――戦争に行く。




 女が――兵士になる。




 それは――当たり前なのだ。




 昔は

 <男がするもの>

 とされてきたものを

 女がするのは

 ”当たり前の事”

 なのだ…――




 男女は平等なのだから。




 そして

 そんな時代に為ったのは、

 ”フェミニスト”

 と呼ばれる集団

 そのお蔭である。



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