荘厳なる少女マグロ と 運動会
<シュヴィメン場>で
"マグロ" に話しかけた子供
"クローン" は
――正確に言うならば…
<"怪人" のクローン>
である。
"怪人" が
――"マグロの母親" と付き合い
――仲が拗れて
――別れた後……
ひとり(バチェラー)の時に、
幾つも作り
――犠牲にした
<自分のクローン>
その中で
「最もマシである」
と思われた出来を
残し、
成長させたものが
そこにいる
<"クローン">
という子供であった。
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[因みに
"クローン" の父親である
"怪人" も、
<クローン>
であった。
"怪人" は
<"蜘蛛宇宙人" オリジナル>
のクローン、
”第一ジェネレーション”。
"マグロ" と出会ったばかりの子供
<"クローン">
は、
”第二世代”
に当たる]
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"マグロの母親" は
"マグロ" が子供の頃から
娘に
『クローンは
<可哀相な子供>
なんだよ………』
と伝えてきた。
母親の愛情を知らない
<不幸な>
子供こそが……――
クローン。
母親がお腹を痛めないのだから。
そんな――繰り返される言説。
自己正当化の為。
だからこそ、
"マグロ" も
――自動的に
"母親" と同じ様に
考え
口にする様に
なっていた。
「クローン = 可哀想」
これこそ――教育の力。
だからこそ、
クローンである
"クローン" を
憐れに
思うのだ…――
事情も知らずに。
―――――――――――――――――――――――――
"マグロ":
「大変だね……」
<お母さんがいないなんて>
という言葉を補足せずとも、
"クローン" は
相手の意図を
理解した。
"クローン":
「ああ………――みんな言うね。
『お母さんがいなくて可哀想……』
って。
なんでみんな
『可哀想…』
って言うんでしょう?
別に
大変な事なんて
ないのに……」
それは
<強がり>
では
なかった。
母親がいない――しかし、憐れに思う事などない。
もう母性神話が崩壊した時代なのだ。
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"クローン":
「セーブツガクテキ [生物学的]
お母さんはいないけど、
代わりはいるし………。
"アノ人" の奥さんが
ウチにいますよ……――
家政婦にも
なれない
ひとが」
"クローン" が
”誰”
と明確に言わずとも、
"マグロ" は
「アノ人」
という指示語が
具体的に誰を指すのか
――少なくとも
――その概要の
予想はついた。
"クローン" と
血のつながりは
ないが、
"クローン" の父親である
"怪人" と結ばれる事により
――自動的に
社会的に
"クローン" の養育者とされる
<"怪人" の妻>。
"クローン":
「ボクにお母さんなんて
いないけど…――
いらないから。
料理のセンスの無い他人が
<お母さん>
なら、
ボク……――
いらない。
頭が悪くて
数学の話も出来ない様な
<お母さん>
なら、
最初から………――
いらない。
エイヨ― [栄養] の計算なら
エイヨーガク [栄養学] やった人を
雇った方が
正確だし。
友達とお喋りしているだけが
”仕事”
の
<お母さん>
なんか……――
いらない。
学校の子達は
"アノ人" の奥さんを
『若くて
綺麗で
イイね』
って言ってくれますけど…――
話に
ならない
もの。
いっつも
『身体は大丈夫?』
とか
『いい天気だね』
とかしか
言わないし……。
やってる事は
エキササイズと
ビチョーセー [微調整]。
でも――何の役にも立ってない。
君のお母さんはどう?
――お母さん、役に立ってますか?」




