荘厳なる少女マグロ と 運動会
モノは
”劣る者”を
繰り返していた。
”劣る者”が
繰り返し続ける事を
繰り返していた。
そして
"マグロ" は
確認した。
虫が…――
「枷」
――の囁きに
<”同”
調>
している事。
寄り添い……――
”共感”
――している事。
みんなで
仲良く
”優秀”を
追い出す………――
「協調
”性”」
――という名の
合唱。
”同”
調圧力。
すべてを
”低レベル”
にする為。
―――――――――――――――――――――――――
"マグロ" は
ハミングを
確認していた。
そして……――
確認した。
虫は
犬に
集っているのでは
ない。
虫は
犬から
栄養を
得ているのでは
ない。
虫は
犬を縛る…――
「枷」
――から
甘い蜜を
吸っているのだと。
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
ただ……――
「枷」
――は
犬から
栄養を
奪う事で
成立している事が
"マグロ" には
見えない。
そして
虫は………――
「枷」
――に
栄養を
与えている……――
「犬」
――に
感謝を
しない。
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
"マグロ" は
辺りを
見渡した。
誰も
いなかった。
人道主義者は
いなかった。
動物愛護主義者は
いなかった。
<人間>
――は
見当たらなかった。
誰もが
感じ、
誰もが
意見を
主張するが…――
「<人>
っ子
ひとり
いなかった」。
独自
”性”
など
何も
無かった。
―――――――――――――――――――――――――
"マグロ" は
縛られた犬の前に
立った。
「U……」
「犬は
"マグロ" を
見ていない」
――という事を
"マグロ" は
見た。
"マグロ" は
動いた。
犬は
目を
動かさなかった。
「Uuuuu………」
犬は
顔を
動かさなかった。
ただ……――
「空」
――を
見つめていた…――
牙を
剥きながら。
「UUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!」
そして
<無表情>
のまま、
吼え続ける。
「can!!」
「can!!!」
立ち続けながら……――
前足を
振り回しながら。
<表情 [フェイシャルインプレッション]>
の無い
そこには………――
「強い力 [ちから]」
――が
発生していた。
ただ……――
"マグロ" は
威嚇されている
”様に”は
”感じなかった”。
"マグロ" は
その他大勢とは
違った。
”劣る”が故に
”劣っている”事だけを
褒め称える
その他大勢とは
違った。
"マグロ" は
去らなかった。
"マグロ" は
読み続けた。
"マグロ" は
犬の遠吠えを
聞き続けた…――
自動翻訳機を
使わずに。
「何度も」
「何度も」
聞き続けた。
繰り返した。
或る時、
"マグロ" は……――
「can!!」
――を
以前に
聞いた事が
ある
”様に”
思った。
そして………――
理解する。
その時……――
思い出す。
「忘れていた事を
忘れていた」
――事を
知る。
犬は
繰り返していた。
「無理じゃない!」
「無理じゃないんだ!!」