荘厳なる少女マグロ と 運動会
"マグロ" の
認識に於いて、
その対象は…――
「その他大勢」
――に埋め込まれる。
それは
他と
違うにも
関わらず。
「e」
――として
設定され……
――それは
――繰り返せば
――繰り返す程
――短縮化されて
――”感じる”
――中で………
他と
同化して……
――省略されて…
しまった。
そして
”忘れた
"マグロ"”は
"蜘蛛宇宙人" に
感謝など
しない。
ただ
代わりに
”忘れ、
オリジンの欠けた
"マグロ"”は
<”同じ”
意見>を
自動生成する。
"マグロ":
《無理》
"マグロ":
《不可能》
その他大勢と
”同じ”
”様に”。
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その間……――
"マグロ" は
"青年" が
出征した事を
知る。
その時………――
失恋したが
しなかった。
そのうち……――
"マグロ" は
新たに
恋を
する。
次の
"青年" に
恋をする。
そして…――
破れる。
そして……――
「次」。
手持ちの
”重力ストーン”
が壊れた時、
別の物へ
交換する
”様に”
恋を
する。
その他大勢と
”同じ”
”様に”。
そして………――
また
壊す。
崩壊すると
最初から。
そのうち、
パートナーを
作る。
そして……――
パートナーシップを
解消する。
それもまた…――
繰り返し。
"マグロ" は、
何度も
何度も
繰り返した。
「年」
――を
繰り返した。
積み重ね乍ら。
そして……――
道を
歩み続けた。
それも………――
愚直に。
内部では……――
「無理」
――が
ループする。
自分自身に
魔法を
掛けるかの
”様に”
それは
働く。
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或る…――
「年」
――の事。
"マグロ" は
歩いていた。
今まで通り
歩いていた。
地に足を
付けて
歩いていた。
堅実に
歩いていた。
道の上を
歩いていた。
ループし続けていた。
浮く事は
無かった。
跳ぶ事は
無かった。
ただ……――
平行線。
その手に
”重力ストーン”は
無かった。
その胸に………――
「石」
――を……
「意志」
――を
抱きしめては
いなかった。
既に
所有する事を
放棄していた。
"マグロ" は
歩いていた。
”重力ストーン”を
抱えない
その手は…――
「自由」
――であった。
ただ……――
先行きが
見えなかった。
ただ………――
歩いていた。
腕は
用を為して
いなかった。
それは
垂れ下がる
だけ。
道具を
利用する為の
道具は
使われずに
放置されたまま。
「何かをしながら
何もしない」
その時、
"マグロ" には
自身の腕が……――
「何の為に
あるのか?」
――わからなかった。
"マグロ":
《…ジャンプには
必要無かった……》
"マグロ":
《スピンにも
役に
立たなかった………》
"マグロ":
《ステップには
役に
立たなかった……》
"マグロ":
《そして
”重力スケート”
を終えても、
役に
立たない》
"マグロ":
《抱く相手は
いない…》
"マグロ":
《抱く物も
無い……》
"マグロ":
《『無い』》
"マグロ":
《これ [腕] は
必要無かったんじゃ………――》
そして……――
"マグロ":
《わたし自体
必要無かったんじゃ…――》。
"マグロ" には……――
「役」
――が………
「役目」
――が
あるのだが、
その時
"マグロ" には
それが
わからなかった。
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