荘厳なる少女マグロ と 運動会
"後輩" は、
繰り返していた。
台詞を
繰り返していた。
ただ…――
繰り返して
いなかった。
次のフェーズにて、
<前のフェーズで
行われた事と
”同じ”事>を
"後輩" は
繰り返しながら
繰り返さなかった。
「話しても
無駄」
――であるからといって
"後輩" は
"マグロの母親" を
後に
残さなかった。
放置しなかった。
”怪人と呼ばれていた者”の
”様に”
更なる
”悪化”へと
導こうとは
しなかった。
"マグロの母親" を
個人的に
罰するつもりは
なかった。
"マグロの母親" を
終わらせようとは
していなかった。
代替しようとは
考えなかった。
"後輩":
《罰したら
こいつ ["マグロの母親"] が
その人 [前の "後輩"] に
なるだけ……。
そして
こいつ ["マグロの母親"] の次が
また
”同じ”
事を
するだけ………》
―――――――――――――――――――――――――
"後輩" は
"蜘蛛宇宙人" から
前のフェーズで
起こった事……
――前の "後輩" が
――経験した事…
を知らされていた。
ただ……――
「ニク
シミ」
――は
無い。
ただ………――
見下していた。
見下ろしていた。
"後輩":
《同じさ……――
こいつ ["マグロの母親"] を
ツブ [潰] したって
ループするだけ》
―――――――――――――――――――――――――
"後輩" は
知っていた。
自身が
どうなるか
知っていた。
繰り返される事を
知っていた。
知らされていた。
そして…――
"マグロの母親" が
問題ではない事を
知っていた。
"マグロの母親" は
重要な点では
無いのだ。
入れ替え可能な対象
なのだ。
次では
別に
なるだけ。
他へ
代わる
だけ。
繰り返す
"後輩" が
終わる時、
終わらせる為に
画策するのは
"マグロの母親"
ではない。
"マグロの母親" という
<先輩>
ではない。
別の先輩。
前の
"後輩" の……――
「人生」
――に於いて
"マグロの母親" が
その………――
「役」
――であっただけ。
次では
別が
その……――
「役」
――を演じる。
"マグロの母親" は
<"マグロ" の母親>
である。
"マグロの母親" は、
"後輩" にとって
先輩だが、
ここでは
"先輩" という
役割ではない。
先輩は
代わるのだ。
「A」
――という俳優は…
『トニオとジュニエット』
――を上演する上で
ジュニエットを
演じるかもしれないが、
別の上演で
ジュニエットは……――
「B」
――に代わるのだ。
「C」
――という俳優が
何度
トニオを
繰り返そうと、
ジュニエットは………――
「D」
「E」
――と
代わるのだ。
ただ……――
”同じ”。
繰り返し。
ジュ二エットは
いつまで経っても
ジュ二エット。
「e」
"後輩":
《こいつ ["マグロの母親"] は
問題じゃないのに
問題とする
必要が
無い》