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荘厳なる少女マグロ と 運動会

 不快が在った。




 見えないが――在った。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "マグロ" は見た。




 不気味な佇まいの

 ――のっぽな

 "怪人" は、

 見ていなかった。




 その目は

 ただ

 ――それまで

 ――"マグロ" に話しかけていた

 <異様な子供>

 だけを

 捉えていた。




 捕らえていた。




 "怪人" の長すぎる腕が

 揺れていた。




 指先が尖って見える。




 突き刺すのに適した――


 「クロウ」。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "マグロ" は

 "?" を見た。




 笑顔だった。




 "?":

 「うん!

  ちゃんと練習

  してるよぉ!!」




 "?" が

 "怪人" に

 話しかけていた。




 嘘をついていた。




 "マグロ" と話している時と

 声の調子が

 違った。




 "?" の

 無理して作った声色

 に対して…――


 "怪人" は

 頷く

 だけ。




 "怪人" も笑顔だった。




 口(くち)を動かさず、

 頬を盛り上げるだけの

 作り笑顔。




 硬直した――眼筋。




 いつまで経っても

 "マグロ" の方を

 見ようと

 しなかった。




 それは

 <口下手>

 や

 <人見知り>

 と呼ばれる者が、

 初めて会った者に対してする

 視線の外し方では

 なかった。




 関心の欠落。




 排除の――センテンス。




 "怪人" は

 ――無言で

 <何か>

 を取り出した。




 ”小枝”

 の様な形をしていた。




 透明のカバーに

 包まれている。




 差し出した。




 "?" は

 手を伸ばした。




 "?":

 「うん!!!」




 受け取った。




 快活な笑顔。




 歪であった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 言葉はなく――命令だけ。




 一方的な支配――


 それはしばしば

 <相互理解>

 と呼ばれる。




 ―――――――――――――――――――――――――




 "?" は

 ――与えられたばかりの

 ――透明

 ――を開けて

 中身を摘(つま)み

 ――折って

 口(くち)にした。




 「……so shirk」




 「so shark………」




 そして

 "?" は、

 美味しそうな

 顔をした。




 それは――嘘であった。




 ―――――――――――――――――――――――――




 飲み込みが確認されると――




 "怪人":

 「じゃぁ……頑張るんだよぉ…。


  負けるんじゃ……ないよぉ………」




 "怪人" は

 顔を背けた。




 "?":

 「うん!!

  ボク、頑張るよ!」




 "怪人" の逸れ行く顔に従って、

 "怪人" の身体のフロントも

 "?" から

 背けられた。




 "?" の言葉に

 注意を向けた様子は

 なかった。




 微塵も。




 "怪人" は

 "マグロ" をも

 ――ちらとも

 見なかった。




 そのまま、歩いて行った――


 入口に向かって

 最短距離で。




 歩(ふ)に――躊躇なし。




 ”重力スケート選手”

 として登録されている

 ――"マグロ" とは別の練習場に通っている

 一(いち)少女が、

 "怪人" の進む軌道の上に

 いた。




 <颯爽>

 から

 ”さわやかさ”

 が欠けて

 #不気味#

 が添加された

 そんな歩き方で進む

 "怪人" を見て――


 その幼き少女は

 顔を

 引き攣らせた。




 突進してくる――威圧。




 道を譲った。




 捕獲者を知り

 逃げようとする

 兎の様だった。




 "怪人" は、

 少女など存在しないかの様に

 進んで行った。




 スピードを落とす事は

 ない。




 邪魔を踏みつける事に

 抵抗などない。




 "マグロ" は

 "?" を見た。




 "?":

 「……今日で終わりなんだ…」




 ―――――――――――――――――――――――――




 ”重力スケート”

 に於ける

 <キテイ>

 では、

 ”重力ストーン”

 で半円を

 #正確に#

 描く事を

 求められる。




 "?" は、

 それをする事が

 出来た。




 それでも

 ――いつでも

 足切り。




 排除対象。




 人工知能は

 "?" の技術が

 選手の中でも

 レベルの高い事を

 ――数字で

 示していた。




 ただ、

 同時に、

 人工知能は

 示し続けた……――


 <踏み切り違反>


 を。




 "?" が大会に出場すると、

 半円を描く前に動かす足の位置が――


 「間違っている!!」


 ――として

 踏み切り違反

 が指摘され、

 それ故

 ”減点”

 が宣告された。




 そして

 ”減点”

 は、

 子供が跳び、

 演技をする

 機会を

 奪うのだ。




 そして

 ジャッジは

 宣告し続ける………――


 <どれだけ優れているか?>

 ではなく、

 <どれだけミスが少ないか?>

 という

 ”基準”

 を用いながら、

 #勝ち負け#

 を決めるのだ。




 そのミスというものも……――人間が決めるのだ。




 人間が決めるのだ。




 ―――――――――――――――――――――――――




 人間達によって、

 "?" は 


 「失敗である」


 と断じられてきた。




 それももう…――終わりなのだ。




 そして……――


 進むべき道に

 進むだけだ。




 ―――――――――――――――――――――――――




 人間社会は変化を続ける。




 その変わり続ける社会の中に、

 変わらない

 <原始人>

 が一定数

 ある。




 常に――あるもの。




 そして

 それらは

 あり続ける………――




 それだけの事。




 それだけの事。




 ―――――――――――――――――――――――――



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