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1008/1061

荘厳なる少女マグロ と 運動会

 "悪人" の

 目の前を

 ”ABEEあびー”が

 飛んでいる…――




 生ゴミに

 群がる

 小蠅の

 ”様に”。




 大量に。




 ただ……――




 "悪人" は

 見乍ら

 見ていなかった。




 "悪人" は

 払う事に

 忙しかった。




 "悪人" は

 追い出す事に

 忙しかった。




 "悪人" は

 自身に

 接着した

 ”ABEEあびー”を

 振り払う。




 ただ………――




 払いきれない。




 "悪人" は

 くち

 紛れ込む

 ”ABEEあびー”を

 追い出す。




 ただ……――




 追い出しきれない。




 手を使う。




 足を使う。




 くちを使う。




 頭を使う。




 全身を使う。




 ただ…――




 目的には

 達しない。




 そして……――




 気づかない。




 表面に

 付帯するもの

 ひとつ

 ひとつが

 自身に

 塗れている事。




 自身に

 包まれている事。




 そして………――




 <自身に

  包まれた

  一部>が

 大量に

 積み重なって

 自身を

 包んでいる事。




 そして

 遂に……――




 "悪人" 全体は

 ”ABEEあびー”に

 包まれる。




 漏れ…――




 「無く」。




 束縛される。




 満たされる。




 ひとつの……――




 集合。




 多くの

 パーツから出来た

 ひとつ。




 そして………――




 他からは

 見えない。




 "悪人" は

 見られない。




 隠される。




 声がする。




 "蜘蛛宇宙人":

 「”ABEEあびー”は

  いつでも

  あなた ["悪人"] と

  共に

  いた。


  一緒に

  ”共感”

  すれば

  ”良い”

  じゃない!?


  自分と

  それが

  ”同じ”

  だって

  ”感じる”。


  それで

  ”良い”

  じゃない!!?


  人間じゃ

  ないんだから」




 "悪人" は

 埋め込まれていた。




 そして……――




 "悪人" は

 切り離されていた。




 ―――――――――――――――――――――――――




 ”ABEEあびー”に

 包まれ、

 満たされた

 "悪人" は

 動く事が

 出来た。




 前に

 進む事が

 出来る。




 ただ…――




 「進んでいる」




 ――というのは

 <認識>

 だけであり、

 実際は

 後退していた。




 ”同じ”……――




 「点」




 ――を

 ループ

 していた。




 どれだけ

 進もうとも

 進めない。




 どこへ

 行こうと

 どこへも

 行けない。




 そして、

 "悪人" は………――




 「点」




 ――の上を……

 ――その中を…

 動き続ける。




 その間……――




 何も

 見る事は

 出来ない。




 失明したのではない。




 解釈は

 必要無い。




 最初から

 見乍ら

 見ていなかったのだ。




 「見ていない」




 ――という

 <状態>が

 戻ったのだ。




 そして………――




 見られない。




 読まれない。




 ―――――――――――――――――――――――――




 集合の中で

 "悪人" は

 もがいた。




 くち

 開く事は

 無かった。




 ただ……――




 思っていた。




 "悪人":

 《わたしは(わ)ぁ…

  ひとりのぉ……

  人間んんん………

  なんだぁ……》




 そして…――




 繰り返しの中で

 <理解しない>

 という事を

 繰り返す。




 「集合は

  有限である」




 ――という事。




 「領域は

  限定的である」




 ――という事。




 そして

 その中で……――




 「”ABEEあびー”が

  増え続けている」




 ――という事。




 「<自身>


  ――が

  薄まっている」




 ――という事。



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