荘厳なる少女マグロ と 運動会
"悪人":
「何をぉ…
言っているぅぅぅ……。
ほらぁ………
あそこにぃぃぃ……――」
"悪人" は
指した。
見ていた。
少女の
行列の先。
”ABEE”が
やってくる
”様”
を見ていた。
"悪人":
「あそこにぃ…――
『在る!』」
"悪人":
「聞こえるぅぅぅ……」
"悪人" は
”ABEE”の音を
聞いていた。
「U………」
「……Uuuuu…」
「UUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!」
―――――――――――――――――――――――――
”ABEE”が
やって来る。
”ABEE”は、
#"マグロ" が
その日
<キテイ>
で描いた線
の通り#に
やって来る。
"蜘蛛宇宙人":
「あれは
来てないんだよ。
来ナガ [乍] ら
来てないんだよ」
否定され……――
"悪人":
「オカシイぃぃぃ………」。
"悪人" には
わからなかった。
「無い」
――事が
わからなかった。
―――――――――――――――――――――――――
"蜘蛛宇宙人" は
”ABEE”を
見なかった。
ただ……――
"悪人" を
見ていた。
狼狽を
見ていた。
見下していた。
"蜘蛛宇宙人":
「あなた ["悪人"] には
わからない。
あれは…――
『在る』
――んだけど……
『無い』
――んだよ。
あなたは
見ナガ [乍] ら
見ていない。
あれは
鳴いてない。
あれは
泣いてない。
泣いていても
泣いてないの。
あれは
ウナ [唸] ってても、
ウナ [唸] ってないの。
<人>が
文脈に沿って
そう
<解釈>
するだけ。
『”ABEE”
とは
どういうもの
であるか?』
”ABEE”はね………――
データを
運んだりする。
言葉を
話す。
”感情”
と呼ばれる
<ジョータイ [状態] >
のスイイ [推移] を……
――<人>と
――”同じ”
――程度に…
示す。
刺したりする。
治したりする。
兵器としても
利用される。
イシを
持ってる。
でもね……――
ホントはね………――
違うんだ。
”ABEE”はね、
本来
そんなんじゃ
なかったの。
”ABEE”はね……――
『分解』
――するものなんだ。
カンゲン [還元] するんだ。
そんでね…――
今は
<現代>
なんだよ。
個人時代のシューエン [終焉]。
”ABEE”はね……――
『個』
――を………
『分解』
――するんだ。
ヨーソカンゲン [要素還元] するんだ。
『個』
――を……
<非個人化>
――するんだ。
固有名詞に
代表される
タイトルを
ハクダツ [剥奪] するんだ。
そんでね…――
”ABEE”は
<人>
なの。
『=』
――なの。
そういう
時代なの。
”ABEE”は……――
あなた ["悪人"] なの。
あなた ["悪人"] は
”ABEE”
なの。
あなた ["悪人"] は
その中の………――
『E』
――なの」
その時だった。
"悪人" は
目の前に
影を
見た。
そして……――
影が
自身に
触れたのを
見た。
”感じた”。
『無い』
――ものを…
”感じた”。
それは……――
「点」。
"悪人" は、
自身の
表面に
密着した、
ひとつの
”ABEE”
を見た。