荘厳なる少女マグロ と 運動会
※注意:この話は、そこら辺の人には<読めない>ので、そこら辺の人は最初から諦めて下さい。
昔――
「アニメ」
――という
<アート>
――が在ったそうだ…。
正式名称は、<アニメーション>と云う。
<アニメーション>は
――古語から
――意味の軸を保持しながら……
時代に合わせて少しずつ意味の限界の修正を続け、
変化してきた英語のワードで――
<生命に満ち溢れた状態>
――を指す。
ただ………
――生命に満ち溢れている様に見えて
<アニメーション>
それ自身の中に
”生命が在る”訳ではない。
有機体は、微塵も、ない。
<アニメーション>は――写像の一種だ。
それは、映像ではあるが、<映画>とは違う。
人間がキャラクターとなって物語を作る――
<映画>
――とは違う。
アニメは――
”人間がその手で描いた絵を動かす”
――というアートジャンルだ。
今となっては
――”人間が書く絵”
――と
――”人間そのもの”
二つの間に横たわる差違は
――人間の肉眼では……
確認できないが――
昔はそうではなかった。
今の認識で言えば、すべての映像作品はアニメだが…
――昔はまだ
人間が
自身の持つ肉体
それ使って演じる部分が
――映像作品に於いて
多かった為に――
<アニメ>というジャンルと
<映画>というジャンルの
――線引きがはっきり出来ていたという……。
そんなアニメ………――
アニメでは、色々な作品が生み出された。
殆んどは、”人間の夢”を示していた。
空を飛ぶ。
超能力。
宇宙人。
未来のロボット。
人間が遡る事の出来ない過去
――絶滅した騎士
――海賊。
冒険。
物質では作り出す事の出来ない――幽霊。
妖怪。
<映画>に登場する”俳優”と云う職業が演じる事が出来ない事――
”人間が出来ない事”
――……それをアニメは可能とした。
不可能を可能である様に見せていた。
本当に色々な作品が在った。
そんな中
――ある時代…
――ひとつ
作品が在った。
たいへん人気があった。
それは――
女が
男を
肉体的暴力を使って
一方的に
虐待する――
<差別的な内容>
――だった。
[今の時代では、完全に差別的表現に当たる……]
男嫌いの女が――
「いやぁ! 触らないで!!」
――と
<か弱い男>
――をグーパンチで殴る。
殴られた男は、吹っ飛ぶ――
壁にぶち当たる。
床に横たわる。
その鼻から――血を流していた。
赤き液体は止まらなかった。
その口から――血を吐いていた。
赤き液体は止まらなかった。
地面に溜まった――紅プール。
男の殴られた皮膚が――赤く腫れていた。
「ぐぐぐ………」
――と苦しみを
――呻り声で
――表現する。
そして傷ついた男は……――仕返しをしない。
細く
――モヤシの様に細く
<か弱い>男は、
女に殴られながら…――
笑っていた。
笑っていた。
アニメのキャラクターはみんな笑っていた。
殴られ
――血を流しながら……
蹲っているキャラクターを見ても
――現実の男も
――現実の女も
何も言わなかった。
何も感じなかった。
笑っていた。
女に殴られ、傷つく男を見て、
皆――
「ほっこり………」
――していた。
<ほっこり>とは、”心地よさ”を示すオノマトピーアだ。
男が床に蹲り、
服を破られ、
荒い息を吐いていても――
「癒される……」
――という世間の意見が多数であった。
誰も問題視しなかった。
それは――コメディであったから。
それは――マンガであったから。
それは――アニメであったから。
可愛いから。
男がMだから。
「楽しければ、何でもイイ!!!」
そんなアニメが何の問題もなく放映されていた。
女性人権団体は、
暴力女性キャラクターが
男性を一方的に攻撃し
痛めつけるアニメに、
何の抗議もしなかった。
ただ、アニメは、回数を重ねた。
そのアニメが放映されてから暫くした時の事。
ある地方の小学生(女子)が
――アニメの真似をして
同級生の男子を
<集団暴行>で
死に至らしめた――
そんな事件が在った。
「男はみんな…殴られて喜んでるんでしょ……?
――アニメで見たし。
………あたしは悪くない!!
男はみんな、
殴られ、
血を流しながら
喜んでいるんだから!
だから、死んだあいつが悪いんだ!!
――男なんだから!!!
アニメでそう言ってた!!」
――と主犯の小学生は、供述した。
結局、犯人は幼いが故に――許された。
そして――再犯。
その様な状勢の反動からだろうか……?――
女嫌いの男が
”女を徹底的に殴りつける”
そんなアニメが放送された。
「やめろ! 触るな!!」
そう言いながら、
<残酷で野蛮な>男は、女を殴った…
――笑いながら。
<か弱い>女は血塗れになって横たわった
――笑いながら。
いつもジョークが挿入されていた。
勿論、女性団体はアニメ制作会社を訴えた……
――女性の権利の為に。
そして――アニメは放映中止となった。
それでも、女が男を殴るアニメは、制作中止とはならなかった。
その時、女性団体は言う………――
「文句があるの!!!?
――なら、男性団体を作れば良いだろうが?」
そして男性が
男性の権利を守る団体を作った時、
言った。
「男の癖に、小さいなぁ……」
世論は
――昔程
女性団体の側に寄らなくなった。
女性が
<か弱く>
<守られる>
存在ではなくなった時代。
女が自立しようとするのではなく
<男に依存しない女が当たり前である>
――時代。
そんな時だった…――気高き少女が現れたのは。
崇高なる少女 "マグロ" が飼育係に任命されたのは。