スプラッタに会いたい
おひさしぶりです。長編は長続きしないので短編にするつもりが、長いし、別視点いれたいしで後2、3話伸びる予定です(笑)
因みに、主人公の名前は嵐子読みます。
主人公の友人の名前、足しました!彼方です。
私が昔から好きなものがある。
それは大概男女問わず引かれるし、更に言うなら弟には諦めた顔で
「ねぇちゃん絶対結婚できないよ………」と言われ肩を叩かれた。
因みに、趣味が原因で彼氏には振られている。
勿論、尊敬すべき姉にそんなこと言うような弟には頭突きをくれてやった。
私が好きなものは、ホラー映画やSF映画だ。バイオレンスな漫画やアニメも大好きだ。
それらが好きなのは、そんな表現が溢れた今の時代割りと普通の事だと思う。
私が引かれる理由、それは
「ひゃぁーー!!!よし!よし、いけ!!!そこだぁ!うっわ、避けた、そこはしっかり食い付いとけよぉぉお!!」
「主人公、血清持ってたの分かってたじゃん。見え見えだったじゃん……なんでそこで一番弱いヒロインを狙わない!!おーい」
「いい破壊光線だ……さすがエイリアン。規模が違うわぁ」
ぶっちゃけて言おう。興奮するのだ。
勿論、現実でそんなことが起これば気絶する自信があるけど、そういうんじゃないんだよ!!
フィクションだと分かっているからこそ、血飛沫が上がり、ビルは壊れ、全てが蹂躙されていく様にテンションが上がる。
小さい子が〇〇レンジャーを応援するように、ゾンビやジェイソン、ジョーズを応援してしまう。
むしろかっこいい。
自分でも回りと明らかにテンションが違うことは分かっているのだ。最初は、心のなかに留めようと努力した。
しかし、ホラー映画祭鑑賞中に、友達や彼氏が恐怖に震えてクッションを抱える中、黙って一人前のめりで興奮に頬を紅潮させる私は友達的にも彼氏的にもアウトらしい。
一緒に怖がれない私は、一人うっとりそれらを楽しむ事が密かな趣味だ。
というか好きすぎて、特殊メイクアーティストになった。
もう、笑うがいい。仕事場の仲間は、職業病だと思っている様だが、本当はこっちが先だ。
それに、仕事柄完全に趣味から離れるのも無理だしね!
しかし、そんな生活も今日で終わりだ!!!
私を哀れに思った友達が、もういっそ同じホラー好きをくっつけようと、そういう趣味の人達が集まる仮装パーティーを紹介してくれたのだ。
それでも恐らくは私と同じように楽しんでくれる男性なんて、ごくごく少数だろうから一緒に鑑賞してくれるだけでいいと思っている。そもそも、偏見かもしれないがこういうパーティーに参加する人達の殆どが、コスプレを楽しみたいという目的を主にして来ているのだと思う。その中から真のホラー好きを見つけるのは至難の技だだろうが、まぁ最悪美味しい料理をいっぱい食べることで良しとしよう。
今、私は最近お気に入りのグロ系ゲーム、グロウブラッドに出てくる敵の女マッドサイエンティスト、ミスト博士のコスプレをしている。ミスト博士は、真っ黒なシャツにタイトスカート、網タイツを着用していて、真っ赤なピンヒールを蹴りあげれば敵味方構わず額に風穴を開ける。
上に羽織った白衣はいつも何処かに帰り血が着いていて、いつも連れている実験体のサモン(仮面マッチョゾンビ)に対して容赦がないことから、一番大好きなキャラだ。
(鞭や、謎の注射は当たり前!)
このキャラは敵(主人公)に対しても、辛辣で、まずお決まりの
「お、お前は……!!あの時の女!!」
みたいな事を言う時間はまず与えられない。
「お、おま「死ね」
で、大体命からがら逃げると主人公の本部は潰されている。
まあ、博士がツインテールで私の髪の長さに調度良かったというのも理由なんだけど。
紹介してくれた友人は、ポニーテールのゾンビの格好をしてくるらしいので、とりあえず私は待ち合わせ場所である入口付近で待つことにする。
待ちながらも、あっ!あの人はあの映画のエイリアンだ!!
おいおい、あの二人組はホラーアニメの加害者と被害者じゃん!?
なんて考えながら、人混みを見ていると
はっ!!!!あれは!?
実写化したらまさに!ああなるだろうっていうサモン(仮面マッチョゾンビ)が同じく壁際をうろうろ?していたのだ!!
サモンもミスト博士とはまた違ったよさのあるキャラだった。
普段はミスト博士にされるがままな弱気なキャラなのに、ミスト博士が先に倒されてしまうと、狂化して片手でビルをなぎ倒してしまうまでになる。
胸熱だったが、1度も話すシーンの無かったサモンが泣き叫ぶ姿はぶっちゃけちょっと泣いた。
そのサモンが向こうに!!
いつもなら、行けなかっただろうが、今の私は違う!ミスト博士なのだ、これはもう運命だ行くしかない!!
サモンの後ろに立つと覚悟を決めて声を掛ける。
「あの!」
「っ!!え、ああぁ」
急に声を掛けてしまったばかりに、かなり驚かせてしまったようだ。背が高く、仮面をつけているため、背の低めな私にきずかなかったのか、暫くキョロキョロした後此方を見た。
本当にそっくりだ。
「そのコスプレ、サモンですよね?」
「サモン?」
「あれ?もしかして、知らないでコスプレしてました?」
「………悪いな、今日は付き添いなんだ。そいつにこれで行けと言われて………」
「ナイスチョイス」
「は?」
ヤベッ声に出てた
そうか……サモン似の男性なんてかなり理想!(顔わかんないけど)って思ったのに!!
じゃあ、ホラーとかスプラッターとか苦手な人かも知れないしなぁ
「何でもないですよ。……それより、凄く似合ってますね!原作にそっくりすぎてびっくりしました。」
「そうなのか?」
あっ照れてる?なんか、サモンが照れてるみたいで感動だなぁ
「はい!あっ写真お願いしてもいいですか!?」
「……ああ」
サモンの人はかなり大柄で二人で写るのが難しい。
その為、サモンの人には近くの椅子に腰かけて貰い、私は横から入る事にした。
「では、撮りますねー。はい、チーズ」
カシャッ
「わぁぁ!ありがとうございました!!」
我ながら良く撮れてると思う!まさにゲームのまんま、ミスト博士とサモンがいるよ!
「お、俺も撮って良いか?」
「?いいですよ」
同じようにポーズを決めてもう一枚。どうしよ、名前聞いちゃおうかな?一緒に映画を観てくれる彼氏じゃなくても、サモン激似のこの人と友達になりたい!
「あの!な、名前。教えてもらえませんか?私、小久見 嵐子っていいます。」
「大塚 鯛………です。……………………………っあの『プルルル、プルルル』
「わっ!すいません、電話いいですか?」
「っ……………はい。」
不味い、私が言った場所にいないから電話掛かってきちゃった。もう少し話したい気もするけど、待たせるわけにはいかない。大塚さんに謝って友達のもとへ向かう。
「もー何処行ってたのさ!!今日はあんたのいい人見つけにきたのにさー。」
「ご、ごめん彼方!ちょっと、素敵な人見つけちゃって。」
「ちょ!詳しく!!」
凄い勢いで迫って来るとこ悪いがそういう意味じゃない。
ただの付き添いだと言うこと、コスプレが滅茶苦茶似ていたことを話すと明らかにガッカリされた。
「なーんだ、ただの付き添いか。素敵な人って言うからどんなホラーマニア捕まえたのかと思ったのに。」
「仮面してたから年齢も分かんなかった。」
「ダメじゃん!もう!!ほら行くよ、パーティー終わる前にあんたの趣味に引かないグロい男捕まえるんだから!」
「グ、グロい男って言うな!!」
「はいはい。」
◇◇
結果を言えばいい人捕まりませんでした。
後で引かれてサヨナラじゃ意味ないと、最初からガンガン自分を出して行ったら見事に引かれた。
こ、この意気地無しぃ!!!
もう、涙目だ。大塚さんにメアド聞くのも忘れたし。
結局、友達に慰められながら酒のんで寝た。
◇◇
1週間後、転機が訪れる。
「ねぇ、大塚 鯛って人知ってる?SNSの知り合いと一緒に来てた同僚があんたに会いたがってるんだけど知らないかって。」
「え。大塚さんが!?その人、写真撮って貰った人だよ!!」
「あぁ!その人ねぇ………ホラーは?」
「うっ!どうだろ?…………また、引かれちゃう………かな?」
慣れてるとはいえ、1度でも仲良くなりたいと思った人に自分が好きなものを否定されるのは正直辛い。あの時の私はミスト博士で、彼はサモンだったからあんなに積極的に行けたんだと思う。
今度会うときには、彼も仮面を着けているわけでは無いし、きっと軽蔑されたら直ぐにわかって……………また落ち込むのだ。
なんか、会うの怖いな
「嵐子、どうする?」
「………」
「あんたがその趣味止めらんないなら、しょうがないじゃない!はい、落ち込まない!しゃきっとする!!」
言葉とは裏腹に優しく肩を叩いてくれる彼女には、本当に頭が上がらない。
「ん。ありがと。何時も彼方には元気付けられちゃうね!」
感謝を告げれば、照れたように髪を混ぜ返される。
ちょ!!照れ隠しは分かったから!!力強い!
「じゃあさ、いっそのことあんたの家に呼ぼう!!」
「い、いきなり!?」
「そ!それで映画鑑賞会しよう。あんたの弟強制参加で、私も行ったげるからさ。そこで思う存分はしゃぎなさい!もし、気持ち悪いなんて言われたら私がぶん殴ってあげるから!」
「ちょ、ぶん殴るって」
親指たててはにかむの止めなさい!
この人マジでやりそうだから怖いんですけど!!
……………………………でも元気出たかな。会ってみたい…………かも。
何時までもウジウジしてたって変わらないしね。
私は、もともとそんなに暗い気持ちが長続きする方じゃない。
今までだって思い立ったら即行動で頑張ってきたのだ。
大塚さんも絞め落とす位の気持ちで、ガンガン行こう!
肉食系女子になってやるー!!
「会ってみるよ!!!」
「決まりね!!そうと決まれば待ってなさい!」
そして、次の土曜日。
私達は大塚さんと映画を見ることが決まった。