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やってくれやがった

 逃げ出したい気持ちを抑え、クラスメイトとともに教室へと移動する。

 周りで、なぁ、あいつ可愛くないか? とか、うほっいい男とか、良い事思いついた! とか何とか、聞きたくない言葉ばかりが飛び交いあい、気持ちも萎えてくる。


 正直に言おう、気持ち悪いし怖いし、貞操の危機を感じてるわ。

『そりゃぁそうよ! 無条件に全男子生徒に好まれるようにフェロモンムンムンにもなってるからね。

安心して掘って掘られてね!』

 待て待て待て待て待て待て!! 掘って掘られてって完全にアウトじゃねぇか! 俺は嫌だぞ! 断固拒否する!!


「なぁ、あいつってなんかフェロモンパなくないか?」


「ああ、何よりあの筋肉……舐めたい」


「ばっか、あのケツだろ? 叩き甲斐も撫で甲斐もありそうじゃないか」


「あほか、あの端正な顔だろ? あの唇に吸い付きたいぜ」


 物凄い近くから聞こえてくる声に、なるべく顔は向けないように視線だけ向ければ俺をガン見して舌舐りしたり恍惚な表情を浮かべていたりする男子生徒多数!

 や、止めろ! マジで止めろ!

 ってか、お前ら脳内でとんでもない事今考えているだろう? 今すぐ記憶から消せ! 俺も記憶から消したい!



 最早突っ込むのも疲れ、浸透を滅却すればなんとやら状態で無心を貫く。

 ぶっちゃげ無心なんか貫けなかったんだけどな!

 時折はぁ……はぁ……って声が脳内に響いてくるし。

 とんでもなく色っぽかったんだけど、ロクでもないこと考えての結果と知ってしまえば全然嬉しくないわ!

 寧ろ俺の貞操の危機かとキョロキョロしてしまって怒られたじゃないか!

 何度か俺のケツ触ろうとしてたりするのを阻止できたから、まぁ助かった面もあるが……嫌すぎる。


 最早俺の癒しは家にしかないと、妹の姿を思い浮かべる。

 ぶっちゃけ妹は美少女だ。勿論恋愛感情なんかないが、とても可愛がっているし、また俺を慕ってくれているのだ。

 学校に救いがないのなら、せめて、せめて家だけはと家を急いで目指す。

 

 いやはや、ホームルームが終わり切る前に逃げ出すように教室を飛び出したのだが……野太い雄叫びが響いてきたから間違いなく俺の選択は正しかったのだろう。

『……私のウホッ♂まみれのハーレムがぁー』

 いやいや、残念そうに何とんでもない事言ってるの?

 と言うか、俺はお前の物じゃない! いや、お前の物になるのはやぶさかでもないが、お前の趣味にそう事をやるのは罰ゲーム以下の何かでしかないぞ?


「うおぉぉぉ、俺に救いはねーのかよ」


 思わず口に出してしまい、尚更落ち込んでしまう。

 うぅ、明日から学校行きたくねぇー。

『行かないと皆君の家に乗り込んで――』

 行くよ! 行くからこれ以上物騒な事言わないでくれ!

 ははは、明日から毎日祭りじゃぁー。

 俺は最後まで逃げ切ってやるからな!

『開き直る隆たん萌えー』

 お前の萌えポイントぜってぇーおかしい!!





「お兄ちゃん! お帰り!」


 いつものように笑顔で迎えてくれるマイシスター。


「おう、ただいまって腕組むとかどうした?」


 しかし、腕組んだりとか流石に日常的にしない訳で、嬉しそうに腕を組んできた妹にそう問いかける。


「えー、ダメェ?」


「いや、ダメじゃないよ」


 可愛らしく小首を傾げたその姿に、間違いなく鼻の下を伸ばしながらそう答える。

 うむ、妹とは言え美少女にこんな事されれば嬉しくない訳がない。

 少なくとも俺はな。


 そんな事を思いながら、なんか妙に硬い胸板に下半身に押し当てられる熱を帯びた何かに……え?

 いや、ちょっ、待て待て?


優希ゆうきさん……つかぬ事をお聞きしますがよろしいでしょうか?」


「どうしたのお兄ちゃん?」


 無邪気に聞いてくる妹に……ゴクリと喉を鳴らす。


「なぁ、何か固い物が当たっているんだけど……」


「ああ、ごめんなさい、ちょっと興奮げふごふごほっ、えっと、あはははは」


 いや、全然誤魔化せてないからな!


「後さ……胸どうした?」


「胸? って何が?」


 今度は本気で不思議そうに聞いてくる優希。

 ……頼む、嘘だと言ってくれよ。


「なんかさ、まるで男みたいだなって思ってさ。

 いや、気を悪く――」


「そりゃぁそうだよ。僕男だもん。

 ってか、どうしたの兄さん? いきなりそんな事言うなんて」


 ジーザス! 神は死んだ! 違う、奴は腐ってた!

『そんなぁ、褒められてもぉ』

 褒めてないわ! 声可愛いしずっと聞いていたいとか一瞬思ってしまうけど出来れば黙っていて下さいお願いします。

『やだ』

 ですよねー!


「ううう、兄さんも僕が女だったら良かったとか言うの?」


「いやいやいや、そんな事ないぞ!

 うん。俺はお前の事が好きだし――」


「本当!?」


 グイっと顔を寄せてくる優希。

 ってか近ぁ!! 今吐息が唇に当たってるからな!


「お、おう」


「良かった! 僕の一人相撲じゃなかったんだね!

 大丈夫、性別の壁も兄弟の壁も全て一緒に越えようね!」


 いや、絶対越えたくないからな!

 ってか、俺のオアシスー!!


「お、落ち着け! 俺はお前を弟して好きって訳で。

 ってえっと……泣きそうになるのは卑怯だ。お兄ちゃんを困らせないでくれ」


 胸がめっちゃ痛い! でも、無理なものは無理。

 寧ろ妹でも無理なのに弟になったらもっと無理! ……なんだけど、パッと見はほぼ変化のない優希が泣きそうになれば心が痛む訳で、情けない顔になるのを自覚する。


「……うん、大丈夫。ちゃんと昔の作法に則って夜這いするね!」


 物凄い嬉しそうな笑みを浮かべて爆弾発言をかましてそのまま去っていく優希。

 ……えっとぉ……いやいや……おぃぃぃぃぃぃ!?

 え? なにこれ? いや、イミフなんだけど!

『男の人は男の人と、メスはメス豚と付き合えば良いと思うの』

 いや、おかしい! 前半も然ることながら後半はお前黙れよ! ってレベルでおかしいから!!

 なに、え? なんか女性に恨みあるのか?

『だって、男の子同士が愛し合う邪魔ばかりするじゃない? でも同士もいるし悩ましいんだよねー。

 あ、ちょっと呼ばれたからバイニー。また後でね』

 いや、おい! 待て!!





 うぉぉぉぉぉおおおお、本当にどっか行きやがったぞ!

 なんか、リンクしてたっぽい何かがオフになったの分かったし。

 ってか、こっちからウンともスンとも言わないのかよこれ!


 うわああぁぁぁぁぁぁ、俺に未来は無い!!

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