ごめんなさい
私達は近くの公園に場所を移した。
映画館は駅と繋がったとこにあって、その隣にはショッピングモールもある。
公園はショッピングモールの隣にあって、緑がいっぱいというより芝生の広場が真ん中に広々あって、その周りに遊具があったり、ベンチがちらほらあるような場所。
休日の今日は遊具で遊ぶ子供達、広場では親子連れや私達くらいの学生達が遊んでいて、賑やかだった。
周りに点在するベンチの一つに美樹ちゃんと私が座り、前に珠美が広場を眺めるように立った。
ここに着くまで、私達はさっきまでの楽しかった雰囲気もなくなり、誰も一言も喋らなかった。
最初の一言を発したのは美樹ちゃんだった。
「・・・ごめんね」
何に対しての謝罪か分からなかったけど、全部最後まで聞くまで黙っておく事にした。
「私ね、須賀くんの事、本当に好きで付き合ってるのかって言ったら・・・違うのかもしれない。
もちろん、須賀くんは優しいし、一緒にいて楽しかったけど、そこに恋愛感情があるのかと言ったら、分からない。
まだ付き合ったばっかだし、これから好きになるかもしれないって思って、一緒にいたけど。
どうもそんな感じになりそうにないっていうか・・・」
ここで止まった美樹ちゃんの方を見ると、迷ってるみたいだった。
だから、私から言ってあげた。
ここ最近で気づいた、美樹ちゃんの気持ち。
「美樹ちゃん、林くんの事、好きになっちゃったんじゃないの?」
美樹ちゃんははっとしたように私の方を見た。
「美樹ちゃん、私と林くんが一緒にいるようになって、よくこっちに来るようになったし。
須賀くんに向けてた笑顔が最近は林くんの方に向けてるよ?」
珠美も頷いて、言った。
「なんか、すごく嬉しそうに話してる。今日は映画館で腕、掴んでなかった?」
美樹ちゃんはあっと呟いて、顔を赤くした。
「林くんはちょっと軽くて意地悪なとこあるけど格好いいし、優しいとこあるからね。須賀くんも優しいけど、そういうとこに惹かれたっていうのも分からなくはないよ。人の気持ちなんて、勝手に決められないと思ってる。
でも、今は須賀くんと付き合ってるから、ちゃんと自分の気持ちを須賀くんに伝えた方がいいよ。・・・須賀くん、気づいてると思うけど」
「林くんの事、好き、なのかな。まだはっきりとは分からない。けど、目で追っちゃって・・・。それでも須賀くん、優しくて・・・。今まで言えなかったの。でも、明日・・ううん、今日、帰って連絡する。このままじゃ須賀くんに悪いもんね。・・・でも、言いにくいね」
「それはしょうがないよ。言いにくいけど言わなきゃ。そっちの方がずるい。須賀くん、もっと傷つく。でも、今言ったらまだ間に合う。・・・少し嫌な女になるのは覚悟してね」
「麻夕ちゃん・・・」
「でも私は美樹ちゃんの友達であることは変わりないよ。女の子は常に恋する乙女、だもん」
「ありがとう・・・。じゃ、今から帰って連絡してみるね」
「うん。頑張って」
美樹ちゃんはすっとベンチから立ち上がり、バイバイ、と手を振って帰って行った。
「麻夕・・・。あんたはどうしてそうお人好しなの。美樹ちゃんとまだ友達でいられる?」
「いられるよ。美樹ちゃん、いい子だよ。自分に正直なだけで。・・・私と違って」
「麻夕こそいい子だよ!こんなに、自分の気持ちを押し殺して、好きな人のために頑張れるんだから。・・でも、今回は須賀は辛いね・・・。慰めてあげる?それともフリーになるんだから今度こそ告白する?」
「ううん。私、何もしないよ。弱ってるとこにズカズカ踏み込んだりできない」
「そっか・・・。麻夕、本当に須賀の事好きなんだね」
私は曖昧に笑った。
しょうがないね。どんな状況でも好きだって思っちゃう。
少しでも傷ついて欲しくない。いつでも笑っていて欲しいって思う。
だから、傷が浅いうちに。
振られちゃうけど。
落ち着いたら、また私とも話してくれるかな。
笑って、くれるといい。