友達から恋人へ
その日は家まで初めて送って貰った。
反対方向だったから、今までは駅で別れていたから、なんか変な気分。
夜に珠美に連絡して、須賀くんに何を話したか問いただした。
「あんた達見てたらさ、じれったくてイライラしてたのよ。お互い好き合ってんのに、なんで分かんないかなって。だから須賀に言ったの。麻夕のこと好きじゃなかったらもう勘違いするような行動取らないでって。その時に聞かれたからさ、麻夕の気持ちを。だから気づけよアホって言ってやったの」
何というか・・・、珠美らしいとは思うけど。
須賀くん、ごめんね。
「でもさ、よかった。麻夕がやっと前の麻夕に戻れる」
「前の私?」
「そう。自分の気持ちを隠しちゃってから、麻夕が麻夕じゃなくなってたからさ」
「珠美・・・」
「心の底から笑えるね、麻夕」
「珠美ぃ~」
今日は泣き虫だ、私。
でもいいの。今日は今までの自分とさよならする日だから。
だから、いっぱい泣いておしまい。
こんなにうれし涙を流す日なんて、そうないと思うから。
せっかくだから、いっぱい流しとくの。
自分の恋に蓋をしてた、意気地なしの私、バイバイ。
***
次の日からは休み中の課外学習があるため、また一週間学校に行く。
下駄箱に着くと、そこで須賀くんと会った。
目が合うと、あの大好きな笑顔を向けてくれる。
「おはよー、麻夕」
「おは・・・え?」
「えっと、名前、呼んでみたけど・・・ダメだった?」
「いや、いいけど・・・。なんか、照れるね」
「うん。・・麻夕もそのうち俺の事名前で呼んでな」
「・・・うん、そのうち」
2人で顔を赤くしながら、教室に向かった。
教室に2人で入ると、いつも後から来るはずの珠美がいた。
「おはよ、麻夕。須賀、よくやった!」
「別に緒方に誉められなくても・・・」
「へぇ。じゃあ、私がいなくてもよかったんだ~」
「いや、別にそれは・・・。ごめんなさい」
「素直でよろしい」
2人で話してるのは昨日聞いたこと。なんか恥ずかしくて顔を上げていられない。
すると美樹ちゃんと林くんが教室に入ってきた。
そして、私と須賀くんの距離を見て、にっこり笑って美樹ちゃんが話しかけてきた。
「麻夕ちゃん、おはよう。昨日はごめんね。でも、よかったね」
「おはよう・・・って、え?」
「ふふ、ごめんね。私も珠美ちゃんと共犯なの。須賀くんに発破かけちゃった」
「お前ら見てたらイライラしてたぞ、俺は」
林くんまで・・・。
「そう。麻夕、あなたのために私達が一肌脱いだの。美樹ちゃんも心配してたよ。麻夕の気持ちに気づいてたし。力になりたいって言ってきたから、手伝ってもらったの」
そっか・・・。
私、みんなに助けてもらってばっかりだ。
何もしないで、一人で悩んで、一人で苦しんで。
周りにはこんなに私のために動いてくれる友達がいた。
やっぱり私は幸せ者だよ。
「みんな、ありがとう・・・」
須賀くんが朝から涙腺弱くなってる私の肩を組んで、さすってくれる。
「須賀くん、や~さし~い」
「うるせぇよ」
林くんと須賀くんの掛け合いに、みんなもふっと笑みがこぼれたところで予鈴のチャイムが鳴った。
私にはとっても頼りになる、大事な友達がいる。
恋に悩んで、一人で抱え込んじゃう、面倒くさい私をほっとけないって助けてくれる友達が。
優しい友達が。
そして、今までずっと一番近くにいたいと思っていた、大好きな友達がいた。
恋してきゅんきゅん楽しんだり、切なくなったり、嬉しかったり、辛かったり。
それでもやっぱりそばにいたかった、友達。
それが、彼氏になりました。
呼び名は変わったけど、やっぱりいつでも彼の一番近くにいたいと思ってる。
これから先もいろんな思いをすると思うけど。
彼のそばなら、隣なら、大丈夫。
これからもずっと、大好きだよ。
End
緩~い作品に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
本編はこれにて終了です。
番外編みたいな形で、この先須賀くんと麻夕ちゃんのその後を書けたら、と思います。
高校生の暴走を。
こちらで書くか、ムーンさんじゃないとダメかはまだ考えてませんが。
その時はまたお付き合いいただけたら嬉しいです。
それでは。ありがとうございました。
HARURIE