失恋者同盟
あの日の夜、美樹ちゃんからメールがきた。
『麻夕ちゃん、さっき須賀くんに会って自分の気持ちを言ってきたよ。
別に好きな人がいるって。最初に告白された時と同じ断り方になっちゃった。
やっぱり、ごめんなさいを言うのも嫌だね。
今度はすぐには今まで通りには戻れないって言われちゃった。そりゃそうだよね。
相談乗ってくれてありがとうね。じゃ、学校で。』
ちゃんと言えたんだ。
というか、また須賀くん振られちゃったんだよね。
ここに、須賀くんの事を好きなやつがいるのに。
ずっと、好きなのに。
でも、恋のベクトルは違う方を向いてる。
世の中うまく行かないもんだ。
月曜日の学校。
私達はちょっと変わった。
というか、須賀くんが美樹ちゃんに告白する前の状態に戻った。
私は珠美と、美樹ちゃんは花ちゃんと。
須賀くんは林くんと一緒にいる。
彼らはあの時はちょっとおかしかった雰囲気も全然ないから、大したことなかったのかな。
ただ、やっぱり須賀くんの元気はなくて。
視線は伏し目気味で。
分かってた事だけど、そんな姿を見ると私まで悲しくなる。
昼休み、久しぶりに珠美と2人でお弁当を食べ、私は次の時間に使う資料を先生に頼まれていたため、職員室に取りに行った。
結構大きめの丸めてある地図、両手で抱え、バランスをとりながら階段を上っていると、上から声を掛けられた。
「大丈夫か?」
上を見上げると、少しバランスを崩しそうになる。
「わっ・・・!」
「おっと。ごめん、俺が話し掛けたから。これ、俺が持つよ」
転けそうになっても落ちなかったのは、声を掛けてきた、須賀くんが腕を掴んでくれたから。
ついでに私の腕の中の地図が抜かれ、須賀くんの手の中にいった。
「えっと、いいよって言いたいけど、重かったからお言葉に甘えようかな。ありがとう」
「ん」
3階にある教室までまだ階段を上って行かなくちゃいけない。
会話しようと思うけど、余計な事を言ってしまいそうで口が開かない。
「・・・俺、また振られた。知ってんだろ?」
それは2階から3階に上る途中の踊り場で聞こえた。
「うん・・・」
「同じ人に2度振られるとな、さすがに堪える」
なんて言っていいか分からないけど、ここでは前のように「元気だして」なんて言えない。そんな言葉は軽すぎる。
でもやっぱり私には言葉が分からないから。
「私も。失恋中だよ。・・・同じ人にずっとね」
須賀くんは伏せてた顔をこちらに向けた。
それは君になんだよって、言いたいんだけどね。
そう思いながら苦笑した。
「園田、その相手って・・・林?」
「は?林くん?なんで?」
「いや、この間までよく話してただろ?だけど・・・」
言いたいのは美樹ちゃんの事だろうか?
もう、全然違うから!あなただから!
「違うよ。林くんじゃない。林くんの事を好きな子は他にいるよ」
「じゃあ誰だよ」
「・・・教えない」
教える訳ない。まだね。いつか、須賀くんが落ち着いて、私に気持ちを伝える勇気がでたら言うかもしれないけど。
「私達、失恋したもの同士だね」
だから今はこれくらい、お揃いのものを持ってもいいよね。
「そう、だな。嫌な事だけど」
「だよね」
「じゃあ同盟でも組むか?」
「何、それ?なんか、彼氏作っちゃいけないみたいじゃん」
「違うよ。どうすれば振られずにすむか、考えるんだ」
そう言って、悪戯っぽく笑う。
今はその笑顔が見れただけでも十分だ。
本物の笑顔を見せてくれるようにって意味なら。
「いいよ、失恋者同盟、組もう!」
「おぅ」
グーにした右手同士を合わせる。
「しかしこれ重てぇ~。女子なんかじゃ無理って松田のやつ思わなかったのかよ」
「だよね!須賀くんがいてくれて本当に助かったよ」
残りの階段を会話しながら上っていく。
失恋する度に須賀くんとの距離が少しずつ近くなってる気がする。なんだか複雑だ。
だけど、どんな形でさえ、須賀くんの近くにいられるのは嬉しい。
その笑顔を一番近くで見ていたいから。




