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三大欲求は、どうなってるの?

 ユーナに引きずられザインは、裏路地から出て、しばらく歩くと、再び屋台のテントが並ぶ市場にでた。

 そこは先程同様、いや昼に近い時間と言う事もあって、より一層、元気な声が飛び交っていた。

 古着屋のあった雑貨や金物屋等日用品を販売している商業エリアを抜けると、食料エリアが広がっていた。

 旅人の多い宿場町という事もあって、見慣れない香辛料や果物等も多くあり見ているだけでも飽きない場所である。

 それにしても、これほどにぎやかな場所で合っただろうかと、ザインは思い返す。

 ユーナを誘拐する為に下見に来た時は、もっと裏側の人間がゴロゴロと居たはずだが、見当たらない。

 むしろ、彼らに取って代わって胸に紋章をつけた自警団の警邏隊員の姿が目に付く。

 ユーナの失踪、正確には、ユーナの脱走で駆り出されたのだろうかと、思惑をめぐらせる。

 けれど、彼らは人探しをしていると言うより、純粋に警備をしているようにしか、ザインには見えない。


「オマエ、逃げないのか?」


「え? 何? これだけ騒がしいと、聞こえない」


 怪しまれないようヌイグルミのフリをしているザインの音量は小さい。

 活気ある声に押されて、聴力が高いユーナであっても、ほとんど聞き取る事が難しかった。


「それじゃ、コレと……コレ、お願い」


 「とりあえず」と、ユーナは目の前の屋台、香ばしい匂いが食欲をそそる串焼き二本を購入する。

 一本は練り物にタレをつけて焼いたような物、もう一本は何かの肉を塩焼きした物で、どちらもコンガリ良い色である。

 それらを手にユーナは、一本脇道に入り、放置されている木材に腰をかける。


「ザインは、どっちが良い?」


「イヤ、今の私は食べれないから」


 それよりも、今後どうするのかと、問いただしたいが「そっかー」とだけ、ユーナは呟き、ハフハフと、ほおばり始める。

 声をかけるのも躊躇うほどの速さで、あっという間に平らげてしまう。


「食事し無いんだ。じゃ、眠たいとか無いの?」


「あぁ、そうじゃの。現状では」


 方法が無くも無いが、ザインが語る前にユーナは、立ち上がる。


「生理的欲求の食欲なし、睡眠欲なし、残るは……まぁ、これ以上は、プライバシーだから聞くのを止めとこうか」


 独りで苦笑すると、ザインを再び引きずると脇道から出てる。

 「次は……」と、目に付いた別の屋台で飲み物や、甘いカットフルーツ、煮物等を次々と買い食い足す。


「前もそうだけど、やっぱ魔力減ると、食欲とか睡眠欲とか……増進するわ。もしかして、生理的欲求さえ満たせば、魔力って戻るのかな」


 「今後の課題だ」と、付け加えながら、ザインの目の前でユーナは、それらも脇道で胃袋に収めたのであった。


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