北風と太陽作戦。
「それにしても、何故オマエは、私に色々問わないんじゃ?」
攻防中に水をさされた二人……見た目的に言えば、一人とヌイグルミ一体、その間には、会話後の隙を見て逃げ込んだザインにより、距離がうまれていた。
ユーナの立っている場所から二メートル程上空、ベッドの天蓋にザインは登っていたのだ。
「だって、明らかに雑魚いや、まぁ良くて、中ボスレベルのザインが大して詳しい事知ってるように思えなかったし」
気だるそうにベッド脇からザインを見上げながら、ユーナは答えた。
「雑魚って……」
三度も窓から落とされたり、話を途中できられたり、暴言はかれたりと……容赦ない数々の扱いが続き、さすがのザインも元気ない様子である。
そんな姿をしげしげと眺めたユーナは、ふいに含みのある笑顔を浮かべると、優しい声色で語りかけ始めた。
「それじゃ、ザインの実力次第で、あなたの話を聞いてあげてもいいわ。魔力だって、定期的に分けてあげる」
「なんじゃ?」
「確かに……あなたは、中ボスどころか、ただの引き立て役だったわ」
「うぐっ」
小さな悲鳴と共に天蓋の上でガックっと、うなだれるザイン。
それを確認すると、ユーナは、さらに「噛ませ犬」だの、「一発屋のやられ役」だの、「ド○ゴンボールでいえば、ヤ○チャだ」だの、知っている限りの単語を並べ、追い討ちをかけ続ける。
数分後には、もう、呻く気力さえなくドンヨリと、天蓋で蹲るザインが出来上がっていた。
「でも、魔法への知識や技術は一流よね」
「え?」
「複数のゴーレムを操ったり、龍になったり、詠唱も無く壁を直したり。これって、並大抵の事じゃ出来ないわよね。私、おじいちゃんから、色々教わってるから、その凄さわかるわ」
「あぁ、まぁのぉ……」
「きっと、純粋に魔法だけで戦えば、レイヴァンにだって勝てる力を持っているはずよ」
「まぁ、老いた体ではなく、全盛期の若い体であったら、勝てたかものぉ」
ユーナは、ベッドのスプリングを利用しジャンプすると、背に生えている翼を広げ、軽々と天蓋の上へと飛びあがり、ザインへと近づいた。
そして、落ち込みと驚きを隠せぬザインの顔、その柔らかな顎に右手を添えると、「その魔法の実力、もっと見せて」と、蠱惑的に微笑んだ。




