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丑三つ時の実験大会(2)。

「現状、ユーナの能力は……魔蓄石マジック・ストーン及びそれを含む品へ魔力の『補給チャージ』。逆に魔蓄石の魔力を吸い上げる『吸収ドレイン』」


 ユーナの住んでいた村の特産品から微力の魔力帯びた物が出てきたのも、この為。

 作る過程で無意識に、魔力を『補給チャージ』していたのだろうと、付け加えた。


「そして、まだ例の事件でしか使用したことが無いが……魔蓄石をかいさずとも術者がユーナ自身の身体に直接触れる事で魔法を使う事が出来る『魔力源マジック・エナジー』か……」


 連れ去り事件でリシュルの水魔法を解く為に使用した『解除キャンセル魔法』を説明しつつレイヴァンは、ユーナの方を見つめる。

 その視線に気づいたユーナは、当時の情景を思い出し一人、悶絶しそうな程、動揺するが何とか理性で押さえ込んだ。


(……暗くて良かったわ)


 顔を赤く火照っているが、幸いにも薄暗いので誰にも気づかれないで済んだようである。

 何故、こんな深夜の丘で実験が行われるには、理由が4つあるらしい。

 まず、人目につかない場所である事。当たり前だが、他者に知られては要らぬトラブルを招いてしまう為。町から街道からも少し距離がある為、深夜に人が来る可能性は限りなく低い。

 その2、拓けた場所である事。ふいの来訪者、それが敵であろうと隠れる場所が無い場所の必要がある。念入りに魔法による隠れる行為も無いか確認済みらしい。

 その3、近くに魔蓄石が存在しない事。何にどのように反応するか分からないからだ。この辺りには、そういった部類の石は存在していないらしい。ちなみに唯一の光源であるランプは、庶民が利用している原始的な油で火を保つタイプである。

 そして、最後の理由は、こんな時間帯でしかこのメンバーが集まらないからである。超人ちょうじん吃驚人間びっくりにんげんのレイヴァンやスケティナ、カクティヌス達3人は、主治医となったカインが止めるのも聞かず、動けるようになったその日から連日、連夜、襲撃された宿屋と同じ町にある買い取った立派な屋敷を拠点に書類処理から外出等繰り返している。何をしているかは、同じ館で寝泊りしているユーナには、知らされていない。そう、いつも肝心な所ではぐらかされている。


(まぁ……説明されても分からない事だらけだけど。自分だってあの夢の出来事、わけわからないし……)


 前回全員集まれた時、あの時は早朝であった。眠い目をこすりながらユーナは、攫われた経緯や夢現ゆめうつつのライオンっぽい生き物との出会い等、一連の騒動については、好奇心の塊で野次馬であるカイルを含め、ここに居る全員に簡単に説明はしていた。

 この件に関して、レイヴァンからも昔勤めていた城である等、多少説明をユーナは受けてはいた。しかし、肝心のアルジュアナ王妃や、ユーナの記憶の無い頃の話は、いつ聞いてもはぐらかされてしまう。

 そのはぐらかし方法は、リップサービスといって『愛の囁き』に始まり、スキンシップという名で『お触り』に、そして……それ以上なる前にユーナが退散して、何とかそれ以上のせいじんしていプレイを逃れてはいる。


(挨拶代わりに「愛している」って、弱い猫耳の付け根をコチョコチョしながりささやいたり、うなじにチューしたり……し・か・も!! みんなの前で……羞恥プレイってやつデスカ!!)


 そう、それらの行為は、皆の居る空間で平気で行うのである。薄暗いので顔色等わからないとわかっていても思わず、両手で顔を覆って隠してしまうユーナであった。


「……それじゃ、ユーナ」


 ハッと顔を上げると、そこには先ほどまで離れた場所で実験を見守るだけだったレイヴァンがユーナの目の前に居た。


「……イヤッ」


 あまりに突然の事で混乱したユーナは思わず、頭2つか3つ程高い場所にあるレイヴァンの頬に向かって平手を向けていた。

 それが、彼の頬に触れる直前--レイヴァンは、軽々とユーナの平手を左足で半歩後ろに下がりながらかわすと、すぐに彼女の腰に右手を回す。そして、左手は彼女の頬へ。彼女の強く勇ましい一撃とは対照的に、優しくそっと添えた。最後にあと少し、リンゴ1個程、顔を近づければ互いの唇が触れる距離で囁く。


「この実験はお気にめさないかい? ユーナ」


「……な、何よ。こんな姿勢で」


「ユーナはん? 聞いてなかったんかい? まぁ、こんな姿勢じゃなくてもえぇやろうけど」


「えっと……」


「『魔力源マジック・エナジー』の事ですわ。術者が、ユーナ様の身体に直接触れる事で魔法を使う……」


「あ、それね。ハイハイ、ハイ、やりましょう」


 ユーナは、さりげなく掴まれた腰と払いのけ、後ずさりレイヴァンとの距離をとる。そんなユーナの耳に虫の声に混じり、背後で小さくため息が一つこぼれるのが聞こえた。


(相変わらず、こちらさんには嫌われているなぁ……)


 そこに居たのは、カクティヌス。彼は、常に敬語・尊敬語は使い、非常に丁寧なお客さん扱いを”よそよそしく”してくれるのである。彼の視線は、常にあるじであるレイヴァンが、「何故このような娘を?」と、いぶかしむといった感じである……そう、ユーナ自身は感じていた。


(まぁ、逃走中にはっきり『嫌い』って言われてるしねぇ。お姉さんとは、対照的だな~)


 姉のスケティナには、好意をもたれている、『恋愛』的な意味で。彼女は、14歳以下の可愛い子なら男女共に恋愛対象で、ユーナはドストライクらしい。

 今は忙しいのか、あまり手を出しては来ていないが。隙あらば、湯浴みやら、着替えの手伝いをしようとしてきている。


「気になったんやけど、今回の実験で術者役はレイヴァンはんじゃなくてもえぇんやない?」


 空気を読まず、聞きたい事はトコトン聞く男カインが疑問の声を上げる。


「確かに術者が、俺でなくてもいいが……」


 ふむ、と言った感じで顎に手を当てながらレイヴァンが答える。


「俺以外、ユーナに触れさせたくない」


 再び悶絶しそうな程、動揺するユーナであった。


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