興味が無いので覚えない。
漆黒の剣は、突き刺さった。
ユーナのスカートに描かれていた赤い魔方陣の真ん中に。
リシュルが呆れていたその時、レイヴァンは密かに魔方陣をユーナのスカートに赤い液体で描いていた。
その赤い液体の正体は、ユーナの血。
アルジュアナによって囚われ傷付けられた、あの時の左胸の傷口を抉り出た血を包帯に染みこませ、それで描いたのだ。
刺された魔法陣を中心に閃光が走る。
強力な光は、二人を中心に容赦無く全ての物を照らし出す。
その光に触れた瞬間、化物共は異形の姿から水へと戻っていく。
レイヴァンが放ったのは、『解除魔法』、それもかなり高位な物。
先程、ザイルを龍から助け出そうとした物よりも難解な方法。
直接、媒体である物に働きかけたのだ。
――さらに力が抜けていく・・・。
ユーナは、レイヴァンと触れているあらゆる場所から魔力が吸い上げられているのを感じた。
体が重い所か、既に感覚さえ無い。
「グッアァ・・・まだ、この程度な・・・ら・・ムッ。」
光を浴びリシュルは、蝋の様に溶けそうになる体を必死に保とうとする。
その抵抗も次第に終わりに近づく。
「・・・・お・・・ぼ・・・・・・ぇ・・・・・」
最後に搾り出すような声を残しリシュルは溶け、液状に戻り泉に落ちたのであった。
それ見届けるとレイヴァンは剣を抜き取った。
同時に光もまた止まる。
「悪いが興味が無いので覚えない。」
勝利の喜びも顔に浮かべず実につまらなそうにあっさりレイヴァンは言い放った。
そして、彼にとって最も関心がある人物を労い、愛でようと抱き寄せていた彼女の顔を見る。
「ユーナ!?」
愛しい彼女は、顔は血の気無く青白く、唇は紫になり・・・・呼吸をしていなかった。




