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痴漢男再び。

――ちょっ?


――これくらい、良いじゃないか。


キッと睨みつけながらユーナはレイヴァンに囁き、レイヴァンは微笑みながらユーナに囁いた。

未だうまく動けない彼女は、彼の左側に頭がある状態で抱きかかえられたまま。

そんな彼女の左胸を彼は抱き抱えながら左手で触っていた。

小柄な彼女の背を回しても彼のスラリと伸びた腕は余裕で胸まで手が届いている。


「先程から二人で何を話しているのです?

 しかも、こんな時にまたイチャツイテいるのですか?貴方達は何て愚かな・・・。

 諦め死になさい、これだけ水に満ちた場所で私に勝てると思っているのですか?」

リシュルは攻撃を休める事無く常に的確に二人、いやレイヴァンを狙い続けていた。

それを紙一重でかわしながらレイヴァンは足を止める事無く逃げていた。

その攻防が何度も繰り返された。


「魔力が尽きるのを待っているのですか?それとも時間を稼いでいるのですか?

 無駄な事を・・・こちらはまだまだ余裕なのですよ。」

められては困ります。と、付け加えると複数の魔蓄石マジック・ストーンをパラパラと泉に落とし、数秒の間を開け先程とは違う詠唱を紡ぎ出す。

そんな数秒の間、レイヴァンは足を止めユーナの抱える向きを変えた。

そして今度は、その左手で彼女の臀部に触れていた。


水悪魔降臨デ・ウォー・サーモン

リシュルが詠唱を終えると美しい花が咲き誇る泉には似つかわしくない奇妙な生き物が泉から生まれ出す。

水で構成されているそれは人と酷似しているが手足の数が6本、蜘蛛の様にはえ、さらにその異形の全ての手には、刀が握られている。

ゾロゾロ、明らかに50体は超える数の化物共は、ゾンビの様に群れながらも確実に二人を目指し歩み寄る。


「今度はお尻を触わるとは・・・本当に愚かな人達です。

 死ぬ前に二人して発情ですか?いい加減になさい!!」

二人のあまりにふざけた行動の数々に怒りを通り越し呆れるリシュル。


「発情とか言うな、少なくとも私は違うわ!!

 動けないのを良い事にされているだけだよ!!

 邪な気持ちなんて無いわよ!!」

ユーナは、慌てて必死になって否定するもリシュルは侮蔑ぶべつの視線を送る。

リシュルが今なお触り続けているからだ。


「何が邪な気持ちが無いです?

 猿のように顔を赤くしながらお話をされても説得力がございませんよ。」


「猿って言うなーっ。」

先程からのリシュルとユーナのやり取りに化物は、足を止め『本当にこのタイミングで攻撃していいの?』と不安げにウロウロ視線を泳がせていた。

それに気づいたリシュルが「何を躊躇ためらっているのです、りなさい!!」と指示を出した。

指示をきっかけに雄叫びの様な奇声をあげながら化物共は二人に一斉に斬りかかった。

その幾つ物の剣をレイヴァンはすかさず腰にいていた漆黒の剣を抜くと同時にそれですべて弾き飛ばす。

水で出来た刀は、化物の手を離れると形を保てず水に返り辺りに散っていった。

片手で一人の女性を抱えての戦闘にもかかわらずレイヴァンは、苦痛どころか、微笑さえ浮かべていた。

さらに襲いくる刀を受け止めると反動をつけ打ち返し化物の体、水の中に浮かぶ魔蓄石マジック・ストーンと叩き斬り、直後――地を蹴った。

駆け出したレイヴァンは、次々に魔蓄石マジック・ストーンを的確に叩き斬りながら路を作る。

化物共も逃さまいと、颯爽さっそうと駆ける男を討つ為にありとあらゆる角度から斬りかかる。

圧倒的な強さだと思われたレイヴァンだが、多勢に無勢、目の前のやいばしのげていたが次第に背に致命傷とはならないまでも無数の傷を残していく。


「何処に逃げているのです?」

泉の中央にいるリシュルが嘲笑あざわらう。

二人が走った先は、泉の淵。


「もう逃げる路はありませんよ。」

二人の前は泉が、後ろには化物が存在していた。


「路を誤ったようですね。」

ロットを振りかざし化物共に止めを刺すように仕向ける。

合図と同時にジリジリと近寄り・・・


――ザッザシュッツザシュザシュ・・・

空を切る音が唸り無数の刀が突き立てられた。

闇夜とあまりの刀の多さ故に二人の姿が見えなくなる。

十秒ほど経った頃、ロットを上げ刀を引くように指示をする。

引かれた刀には、黒い・・・小さく切り刻まれた黒い布、レヴァンの身に着けていたマントが付着していた。

ただ、それだけが。


「――何?」

消えた二人をリシュルは眉をひそめ探す。

特に難しいことは無い。


「水の中に逃げただけですね。」

そう、呟くと目を凝らし花と葉を浮かべる水面を探す。


――チャプン

探し出してから程なくして、二人の顔が浮かび上がり、そして立ち上がる。

さして深くない温かい泉は、ユーナの胸の高さ程であった。

水面に彼女の着ていたワンピースが月の様に広がる。


「わざわざ、私のテリトリーに・・・ご苦労なことで何!?血迷ったか!?」

声を上げ驚愕するリシュル。

何故なら小さく何か呟きながらレイヴァンは、片手で支えていたユーナを抱き寄せると彼女の背中を目掛めがけ剣を振り上げ・・・そして振り下ろしたからであった。


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