orzな気分。(1)
建物は、部屋同様、立派で豪華な造りだが、長年使用していない埃や火事があったのか煤汚れていた。他にも家具や備品だったものが散乱している。
そして、想像以上に広く屋敷というよりお城と言った方がしっくりきた。
錆ついているからか、細工をされているからか窓は開かない。
それどころか、場所によっては扉さえも開かない事もあった。
この世界で過ごして数年、のどかな田や畑に豊かな森、大きな建物といえば作物を保管する倉庫くらいしかない。
そんな僻地の村育ちだった為、この建物サイズにユーナは驚くばかりであった。
――東京ドーム何個分かな?
そもそも、東京ドームに行った事もなければ、その大きさが何立方メートルか知らないのに。
つい、大きい物の例えにソレを想像してしまう自分が少しおかしかった。
まだ、他に敵がいるかもしれないのに、そんな平和ボケした考えでは、危険。
慌てて気が緩みそうになるのを自分で律して、慎重に、けれど早く逃げれるよう出口を探し歩き回った。
夕日が沈み、外が暗くなる。
厚い雲に覆われ月も星も見えず、建物の中は真っ暗となった。
そして、雨が降る音が聞こえる。
――ちょっとした明かりさえあれば見えるのに。
天気を恨んでも仕方ないが、恨めしそうに開かない窓を見るしかなかった。
長年使用してない故に足元には割れたガラスや炭になり損ねた木材等。
足場も良くなく、その上、左足の枷と鎖が歩く度に、キンっと甲高い小さな音を上げた。
時計が無いのでわからない。
どれ程歩いたか、外を目指しているのに、気付けば、次第に建物の中央へと移動していた。
手探りで歩く中、扉を見つける。
恐る恐るドアノブに手をかけ開く。
――ギギィギィ……
錆びついた蝶番の音が響く。
ただ、空気に響く音が今までと違う。
広い空間特有の感覚。
取り合えず一歩前に入るも視界には黒一色の世界であった。
――何だろ?
ゲームであけちゃいけない扉を開けたような気分。
別の道を探そうと思いソロリと、後退りするも……
――バタンッ!
「自動ドア!?」
勝手に扉が閉まった。
いやいや、この世界でそんな機械が有るわけないと思わず自分で内心突っ込む。
この展開って……王道的……
「ククック……待っていた」
ユーナは、あまりの展開に脱力して、床に手を着き体を支えるしか無かった。いわゆるorzと呼ばれるポーズに。




